【大学教育センター】第13回教育改革シンポジウムを開催!「ユニバーサル化時代の大学はどうあるべきか」

【大学教育センター】第13回教育改革シンポジウムを開催!「ユニバーサル化時代の大学はどうあるべきか」

9月18日(金)、福山大学1号館1階大講義室において、第13回教育改革シンポジウムを開催しました。今回のテーマは、「ユニバーサル化時代の大学はどうあるべきか ~学生の学びの様子を探る~」です。講師には、神戸大学高等教育推進機構の葛城浩一准教授をお迎えしました。

葛城先生は教育社会学・高等教育研究を専門とし、大学生の学習活動や「ボーダーフリー大学」に関する研究を長年続けておられます。講演では、大学進学が広く一般化した「ユニバーサル化時代」において、大学がどのように学生の学びを支え、教育の質を保証していくべきかについて、多くの調査データをもとにお話しいただきました。その様子を、大学教育センターの前田が紹介します。

 

 

第13回教育改革シンポジウムのポスター

大学の「ユニバーサル化」と学生の変化

講演ではまず、日本の大学進学率の推移を振り返りながら、高等教育が一部の学生を対象とした「エリート型」から「マス型」を経て、多くの人が大学教育を受ける「ユニバーサル型」へと移行してきたことが説明されました。ユニバーサル化によって大学教育の機会が広がった一方、大学にはこれまで以上に多様な学生が入学するようになっています。葛城先生は、その象徴的な存在として「ボーダーフリー大学」を取り上げ、そこで生じている問題は一部の大学だけの問題ではなく、「大学とは何か」を問い直すうえで重要なテーマであると説明されました。

さらに、福山大学の教員を対象に事前に実施されたアンケート結果も紹介されました。その一例として、学生の状況に応じた授業の工夫について、多くの教員がその必要性を認識していることが示され、多様な学生の学びを支えるために、授業や教育方法をどのように工夫していくべきかを考える機会となりました。

開会挨拶をする大塚豊学長

学習面の課題を抱える学生に、大学は何ができるのか

葛城先生は、学生が抱える課題として、基礎学力だけでなく、学習習慣や学習レディネス、学習への動機づけなどにも注目されました。その上で、学習面で課題を抱える学生に学びを促すためのポイントとして、

① 学習習慣や学習レディネスを身につけられるよう意識的に働きかけること
② 学生同士や教員とのやり取りを含む「相互作用型授業」を積極的に取り入れること
③ 授業を学ぶ意味を学生自身が十分に理解できるようにすること

の3点が示されました。特に印象的だったのは、単に「学生の学力が下がった」と捉えるのではなく、学生一人ひとりの多様な状況を踏まえ、大学側が教育の方法をどのように工夫していくのかという視点です。

一方で、学生の状況に合わせて教育内容を変えるだけではなく、大学卒業時にどのような力を身につけているべきかを意識することも重要であると強調されました。学習面に課題を抱える学生ほど教育的な支援を必要としており、大学には、その課題を克服しながら卒業後につながる学びを支える役割が求められます。

基調講演を行う葛城先生

「授業外学修」をどう生み出すか

講演の後半では、教育の質保証という観点から、授業外学修について詳しく取り上げられました。葛城先生は、学生が授業外で学習しない背景として、成績評価のあり方、事前・事後学修の設定、試験のあり方など、学生自身だけではなく、大学側の教育設計にも要因があることを紹介されました。また、教員側についても、授業外学修を促す取り組みの重要性が十分認識されていないことや、学生を卒業・就職させることが優先されやすいこと、教育に時間をかけるほど教員の負担が大きくなることなど、大学教育をめぐる構造的な課題が示されました。

こうした議論からは、学生に「もっと勉強しなさい」と求めるだけではなく、学生自身が学ぶ必要性を実感し、自ら学びたくなるような教育環境を大学側がどのように設計するかが重要であることが伝わってきました。

基調講演の様子

「学位」にふさわしい大学とは

さらに講演では、「大学を卒業し、学位を取得するとはどういうことなのか」という根本的な問いにも話題が及びました。葛城先生は、「学位」にふさわしい大学であるための一つの要件として、教育と研究の両立を挙げられました。

大学教員が研究成果を教育に還元し、また教育実践を研究へとつなげていくことは、大学という教育機関の重要な特徴の一つです。一方で、学生の状況や担当授業数、大学組織のあり方などから、研究成果を教育へ十分に還元することが難しい現状についても紹介されました。

そして講演の最後には、これまでの議論を踏まえて、「福山大学はどうあるべきか?」という問いが投げかけられました。葛城先生からは、学生の学びを支え、教育の質を高めていくこれからの大学のあり方を考える一つの視点として、「教育の福山大学」という考え方が示されました。これは、教育を大学の強みとしていくために、大学として何を大切にし、どのような教育を実現していくのかを改めて考える問題提起でもありました。

 

会場との対話

基調講演後の質疑応答では、さまざまな視点から質問が寄せられました。

経済学科の講師からは、大学教育の成果を企業や社会がどのように評価しているのかについて質問がありました。葛城先生からは、就職率などの数字だけで大学教育の成果を評価することには限界があり、学生自身による評価、学習成果の直接的な評価、社会からの評価など、複数の視点から捉える必要があるとの説明がありました。

続いて、経済学科の教授からは、大学として教育の質を担保しながら、企業が求める人材をどのように育成していくのかについて質問がありました。これに対して葛城先生は、フィンランドの大学で、インターンシップ先で見つけた課題を卒業研究につなげる事例を紹介し、企業と大学が連携し、実社会の課題を大学での学びに取り込む方法も考えられると話されました。

また、人間文化学科の教授からは、学習面に課題を抱える学生だけでなく、高い学習意欲や力を持つ学生への教育について質問がありました。葛城先生は、学生間の学習状況の幅が大きいこと自体が今日の大学教育の難しさであるとしたうえで、学生それぞれが学べる環境や居場所を見つけ、新たな挑戦や成長につながる経験を得られるよう支援することが重要であると述べられました。

会場からの質問の様子

 

質問に答える葛城先生

四者対談とフロアとの対話

休憩を挟んだ第Ⅱ部では、基調講演で示された問題を実際の授業実践へとつなげながら、葛城先生に加え、生命工学部の阪本憲司教授、薬学部の半田由佳講師、大学教育センターの今井航教授による四者対談が行われました。

四者対談の様子

 

阪本教授からは、授業の冒頭で学生に問いを投げかけ、まず興味を引き出した上で、基礎から応用へと学びをつなげていく授業実践が紹介されました。また、自身の研究やフィールドでの経験を授業に織り交ぜることで、「学んでいることが、その先にどのようにつながっていくのか」を学生にイメージさせることを大切にしているとのお話がありました。

半田講師からは、薬剤師国家試験や将来の職業から逆算して、現在学んでいる内容の意味を学生に伝える工夫や、毎回の小テストを活用して学習状況を学生自身と教員の双方が確認する実践が紹介されました。一方で、単に「やらなければならないから学ぶ」のではなく、大学で興味を持てる学問に出会い、自ら学びたくなるきっかけをつくることの大切さについても語られました。

対談では、学生の学習意欲を高める上で、教員自身が専門分野を「面白い」と感じ、その面白さを熱量をもって伝えることや、学生への問いかけを通じて授業への「スイッチ」を入れることの重要性について意見が交わされました。

授業実践を紹介する阪本憲司教授

 

授業実践を紹介する半田由佳講師

 

対談後には、会場からも質問が寄せられました。

海洋生物科学科の講師からは、教育・研究に加えてさまざまな大学業務を担う中で、限られた時間をどのように配分し、教育と研究を両立していくべきかという質問がありました。葛城先生からは、大学によって教育と研究に求められる比重は異なるものの、福山大学のように研究も求められる環境の中で両立を考えられること自体を、一つの強みとして捉える視点が示されました。

対談を進行する今井航教授

 

閉会挨拶をする鶴田泰人副学長

「教育の福山大学」を考える機会に

今回のシンポジウムを通して改めて感じたのは、学生の学びをより良いものにするためには、学生自身に努力を求めるだけではなく、大学や教員がどのような学びの環境をつくるのかを考え続けることが重要であるということです。

基調講演では、授業やカリキュラム、成績評価、授業外学修、教育と研究の関係など、大学教育をさまざまな角度から見直す視点が示されました。さらに第Ⅱ部では、実際の授業における問いかけや動機づけ、教員自身が学問の面白さを伝えることなど、日々の教育実践に結びつく具体的な議論へと発展しました。

今回、葛城先生から一つの視点として提示された「教育の福山大学」という考え方は、何か一つの方法を実践すれば形になるものではありません。学生一人ひとりの学びと向き合い、それぞれの教員が自らの教育を問い直し、さらに教職員が互いの実践を共有しながら改善を積み重ねていくこと、そうした日々の積み重ねの先に、本学ならではの教育の姿が形づくられていくのではないかと感じました。

福山大学大学教育センターでは、今後もFD活動を通して、教職員が大学教育について共に考え、学生一人ひとりの学びをより充実させるための教育改善を進めていきます。

 

学長から一言:「大学教育について本学全体で考える場を継続的につくりたい」との思いから始まった教育改革シンポジウムも早13年目。第一部の基調講演者、神戸大学の葛城浩一准教授は、大学進学が普遍化した時代の大学が教育の質保証と社会的役割をいかに両立させるべきかを縦横に論じ、「教育の福山大学」を目指せと鼓舞激励されました。第二部で登壇の阪本憲司教授、半田由佳講師は学生による授業評価の高得点者だけあって、その実践報告はさすがに傾聴に値し、大学教育センターの今井教授も交えた4者対談で議論がさらに深まりました。

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