【機械システム工学科】進水式を見学しました!
新造フェリー「みせん丸」の進水式が福山市鞆の浦にある本瓦造船で挙行され、福山大学も招待していただきました。この進水式に、機械システム工学科の学生と本学オープンキャンパスに参加する高校生・高専生を、機械システム工学科の木村純壮教授と田中寿夫教授が引率して参列しました。その様子について、田中寿夫教授から報告が届きました。(投稿は機械システム工学科のFUKUGDAI Magメンバーの小林です)。
JR西日本宮島フェリーは、宮島口桟橋・宮島フェリーターミナル間を結ぶ航路でフェリーを運航しており、厳島神社参詣に訪れる多くの観光客に利用されています。現有の「みせん丸」は1996年竣工で老朽化したため、本瓦造船で代替船建造が行われ、このたび前船の名前を引き継ぎ「みせん丸」として進水しました。新「みせん丸」は、総トン数310 トン・全⾧35.00 m・旅客定員500人で、船名の「みせん」は宮島にある名峰「弥山」からとられています。
進水式2日前に台風15号が中国四国地方に上陸したため、気象・海象に大きく影響を受ける進水作業の実施が危ぶまれましたが、当日は快晴となり船主関係者をはじめとして地元の方々や記念演奏を行う広島県立福山誠之館高校吹奏楽部の高校生など、合計400名以上の方が参列する盛儀として進水式は挙行されました。
本船を建造された本瓦造船株式会社は、福山市鞆の浦に本社と造船所を持ち、主に小型の貨物船・旅客船を建造している瀬戸内エリアでも有力な造船会社で、日本船舶海洋工学会選定の2024年シップオブザイヤーを受賞したハイブリッド型水素燃料旅客船「HANARIA」を建造するなど、高い技術力を有することで知られています。本学とは同じ福山市にあることから、10名以上の本学卒業生が同社で活躍中です。
本年4月に福山大学が工学部機械システム工学科に海洋機械コースを新たに開設したこともあり、海事産業に対する学生の認知を拡げられるよう本瓦造船のご好意により今回の見学が実現し、本学機械システム工学科の学生4名、さらに本学HPでの募集に応募された高専生・高校生4名の合計8名が進水式に参列しました。

<進水式を見学した本学学生・引率教員(後列)、及び高専生と高校生(前列)、後方右は「みせん丸」>
進水式ですが、現在では造船ドックと呼ばれるプール状のスペースで船を建造して、そこに注水することで船を浮かべることが大型船建造では多くなっています。一方、小型船の建造では船台と呼ばれる坂道状のスペースで船を建造し、進水式で船を滑らせて海面に導き浮かべる方法が古くからとられていますが、今回はこの方式でした。

<進水直前の船台上の「みせん丸」>

<命名された「みせん丸」>
船台での進水は、重量のある船体が一気に坂を滑り降りて海面に突入することになるので、やり直すことができない危険と隣り合わせの作業です。また、海という危険をはらんだ自然の中で船が生涯を送ることと併せて、人間の誕生と成長になぞらえられるようになったため、その無事を祈願する神事が進水式では必ず行われます。今回も、進水式の無事と船の安全を祈願して、地元の神職による祝詞・玉串奉奠などの一連の神事が浸水に先駆けて厳かに執り行われました。
船主(JR西日本宮島フェリー)による命名の後、支綱が截断されると船は船台を滑り降りて進水するのですが、初めて進水式を見学した学生・生徒たちは、「こんな大きなものが動くのかな?」等などと半信半疑でした。しかし、もちろん見事に進水して、参列者一同で新造船の誕生をお祝いできました。
本船は本土・宮島間の短距離を頻繁に往復する航路に投入されますので、通常の船とは異なり写真のように完全に前後対称の珍しい船型になっています。このため、着岸のたびに方向転換(車庫入れ)する必要がありません。進水するまでは全体がわかりにくかったのですが、進水後に海に浮かぶと前後対称であることがよくわかります。

<進水した「みせん丸」>
機械システム工学科では、これまでも「ものづくり教育」を重視して外部の工場見学などを実施してきましたが、今回初めて進水式の見学を行いました。日本では、製造業全般の地盤沈下や人手不足が問題になっており、それは本学の位置する瀬戸内エリアでも共通の課題です。特に造船などの海事産業においてはその傾向が顕著になっていますが、一方で今回お招きいただいた本瓦造船のように高い技術力を生かして社業を発展させておられる企業もあり、ここで本学の卒業生が活躍されているのは心強い限りです。今後さらに地元の海事産業との連携を深めて有能な人材を供給できるよう、全学を上げて取り組むよう、努力したいと思います。
学長から一言:高い技術力を誇る地元造船業界の雄、本瓦造船社のご厚意で実現した今回の進水式見学は、海洋機械システムコースを新設した工学部機械システム工学科の学生諸君、そしてたまたま同日午後に実施のオープンキャンパスにも参加の高校生・高専生の皆さんには忘れ難い思い出になったことでしょう。これから宮島を訪れるたび、前後対称の珍しい形の「みせん丸」に出会うのが楽しみになりました。




