【海洋生物科学科】タイ王国プリンスオブソンクラ大学での国際学会講演と水族館・観賞魚養殖施設の訪問

【海洋生物科学科】タイ王国プリンスオブソンクラ大学での国際学会講演と水族館・観賞魚養殖施設の訪問

タイ王国プリンスオブソンクラ大学で開催された国際学会への参加報告が海洋生物科学科の水上講師から届きましたので、同学科 FUKUDAI Mag.メンバーの阪本がお知らせします。

 


国際農業イノベーション・天然資源会議

本学の大学間学術交流協定締結校であるタイ王国のプリンスオブソンクラ大学(PSU)の天然資源学部(Faculty of Natural Resources)が主催する「第2回国際農業イノベーション・天然資源会議 “The 2nd International Conference on Agricultural Innovation and Natural Resources”」(8月14日~15日)が開催され、同学部の水産増殖学科(Department of Aquatic Science)がこの会議の一環で開催した「第3回水産科学会議―安全で持続的な水産食品生産システムと水産資源 “The 3rd Aquatic Science Conference – Securing Sustainable Aqua-Food System & Resources” 」(8月15日)に、水上講師が本会議の国際委員会メンバーとして招待され、基調講演を行いました。本会議への参加を通じて、さくらサイエンスプログラム(SSP)をはじめとする国際的な共同研究のより一層の推進についても、インドやタイの大学関係者らと協議してきました。

8月13日午後8時に、同じく本会議への招待を受けた宮崎大学工学教育研究部のThi Thi Zin教授らと目的地タイ王国のハジャイ市に到着し、大学関係者の出迎えを受けました。夕食後、ホテルにチェックインして、就寝。

翌8月14日はインドや台湾からの参加者と合流し、午前9時から「第2回国際農業イノベーション・天然資源会議」に出席しました。PSUの大学評議会議長や天然資源学部長による、タイと食料安全保障に関する基調講演を始め、台湾やマレーシアの研究者による機能性飼料の応用やポストバイオティクスに関わる発表がありました。

オープニングセレモニーと基調講演

8月15日の「第3回水産科学会議」で、私は3人目の演者としてシロギス養殖における健康管理に関する内海生物資源研究所での取り組みとともに発表しました。さらに会議内では日本人、タイ人やインド人の学生並びに各国の研究者が最新の知見について発表し合い議論を深めました。最後に関係者が集まって、来年の国際会議について議論をし、再会を約束しました。

研究発表をする水上講師

PSUの農業フェア

ハジャイ滞在期間中はPSUの農業フェアが学内で開催され、ドリアンやサイアム・ルビー・ポメロ(大型の柑橘類)などの果物コンテスト、地元農産物の展示・販売、農業技術や研究成果の紹介、学生や地域住民向けのワークショップやセミナーなどが開かれ、多くの一般市民でとても賑わっていました。

ドリアンとポメロのコンテスト

ココナッツやバナナの販売

農作業器具

寿司コーナー

日本にも人気のベタ(闘魚)

ニシキゴイやキンギョも人気

RUTS附属水族館への訪問

タイ王国のラジャモンコン工科大学スリビジャヤ校(RUTS)は、SSPによってこれまで2名の教員と5名の学生を本学に招へいしている実績があり、本学と類似の学部構成を持っています。昨年度は伊丹教授がソンクラキャンパスを訪問し、大学校交流協定と学生交流協定について協議が行われました。ハジャイからおよそ150㎞北にあるRUTSトランキャンパス内には、Institute of Natural Resources and Environment(天然資源環境研究所)があり、その一部門として一般公開するトラン水族館を運営することも本学と類似していることから、トラン水族館を訪問して今後のさらなる交流について協議してきました。

RUTSトランキャンパス水産科学技術学部の学部長Dr. Manoch Kamcharoenとの面談。写真左の右列中央は今回の訪問を調整いただいた同大学のDr. Kittichon U-Taynapun

トランキャンパスはアンダマン海に面し、浅瀬には餌となるアマモ類が繁茂して、ジュゴンの生息地にもなっています。近隣の河口域には生物の多様性に富むマングローブが生育し、ユニークな生態系がみられます。このような熱帯域における海洋生態系や生物多様性など、水族館だけでなく海洋環境を学ぶ本学科の学生たちの研究施設として、とても素晴らしい環境が整っているキャンパスだと感じました。

広大な干潟域

大学敷地内のビーチは一般開放され、キャンプや海水浴も可能

水族館にはジュゴンやウミガメなどの希少な海洋動物の保護を支援する施設も

観賞魚養殖施設訪問と国立公園散策

トランキャンパスからKrabi空港までの移動の合間には、Krabi Coastal Fisheries Research and Development Center(クラビー沿岸漁業研究開発センター)とTha Pom Klong Song Nam(ターポム・クローンソンナム)を訪問しました。クラビー沿岸漁業研究開発センターでは食用となるアジアン・シーバス(Asian Seabass, Lates calcarifer)やジャイアント・グルーパー(Giant Grouper, Epinephelus lanceolatus)だけでなく、クマノミ類など観賞魚類の繁殖にも積極的に取り組まれていました。70台ほどの水槽には、系統別に管理されたクマノミ類の親魚ペアーが飼育され、さらに繁殖水槽区・孵化水槽区・育成水槽区など各ステージにエリア分けしながら管理されていました。

親魚ペアーの管理水槽

孵化後の稚仔魚育成水槽

特徴的な縞模様が出始めた稚魚

大きく育つと大きな池の生簀で管理

生簀の周囲には大きなスズキやハタが!

センターの技術職員らと

ターポム・クローンソンナムは、マングローブの原生林に設置されたボードウォークを散策しながら水生生物や野生動物などを観察することができる国立公園で、「Klong Song Nam」とは「二つの水の運河」、つまり淡水と海水が混ざる「汽水域」を指すそうです。その名の通りほんの数kmの区間で、干潮時には湧水地から真水が海に流れ込む淡水域となりますが、満潮時には海水が河口から流れ込み、塩水と汽水域に変化する貴重な生態系です。

干潟の代表シオマネキ類のモニュメント

下流域は典型的なマングローブ林

中流域には淡水性水草も繁茂

上流域。すぐ先に湧水地があるとのこと

上流の淡水域は観賞魚として人気のベタ(闘魚、Betta)

原種の生息地になっている

今回の国際会議では、研究者や学生との情報交換や活発な討議が行われ、非常に有意義な時間を過ごすことができました。また、大学附属水族館をはじめとする各研究施設の訪問や、現地の豊かな生態系を肌で感じる体験は、私自身の研究意欲や探求心を大いに刺激するものでした。しかし、それ以上に強く感じたのは、本学科の学生たちにも、若いうちからこのような国際会議に参加し、同じ分野を学ぶ海外の学生たちと交流する機会を提供することの重要性です。こうした経験は、彼らの視野を広げ、将来の研究やキャリアにつながる貴重な財産となるはずです。

現在、SSPを通じて、PSUやRUTSから教員・学生の皆様に福山大学へお越しいただいていますが、今後は本学科の学生をタイへ引率し、さらなる大学間交流へと発展させていくために、今後も各国の研究者との交流を継続し、国際的な学術ネットワークの構築に努めたいと思います。

SSPの同窓会での様子

ハジャイ滞在最終日には、SSPの同窓会を開催し、本学を訪問した多くのSSP同窓生との再会を喜びました。そして、本国際学会での来年の再会と現在申請中の新しいSSPでの新たな出会い約束して、帰途へつきました。

食事に出たキスの揚げ物

滞在中に幾度と見掛けたキスの揚げ物。福山大学で養殖するシロギス(Sillago japonica)とは異なる種類で、日本にも冷凍品として多く輸入されているホシギス(Sillago aeolus)または暖かい海に生息するモトギス(Sillago sihama)と思われますが、タイでも釣りの対象やフライで食されるなど、お馴染みの魚でした。

最後に、今回の国際会議への出席は福山大学からの学内研究助成事業(教員海外旅費)の支援を受けたことを申し添えます。

 

学長から一言:本学の交流協定校であるタイ王国のプリンスオブソンクラ大学(PSU)主催の農業や水産に関する国際会議で基調講演を行った海洋生物科学科の水上雅晴講師、お疲れ様でした。さくらサイエンスプログラムをはじめとして日頃から緊密な交流のある同大、そしてタイ現地でのエネルギッシュな活躍ぶりが伝わってきます。大学附属水族館をもち、本学との共通性も多いRUTSとは、さらなる交流の発展が望まれます。いっそうの尽力を期待します。

この記事をシェアする