【心理学科】日本司法福祉学会 司法福祉研究集会 in 福山が開催されました
2026年5月23日(土)、日本司法福祉学会による「司法福祉研究集会 in 福山」が開催されました。その様子をFUKUDAI Magメンバーで心理学科の向井がご紹介させていただきます。
今回の研究集会では、「地方における再犯防止と立ち直り支援」をテーマに、司法・福祉・心理・地域社会の接点について、研究者と実務家がそれぞれの立場から議論しました。
司法福祉とは、刑事司法や少年司法の問題を、福祉的な支援や地域社会とのつながりの中で考えていく分野です。犯罪や非行をした人の立ち直りを考える際には、本人の努力だけでなく、住居、就労、家族関係、学校、医療・福祉サービス、地域の支援資源など、さまざまな条件が関わってきます。特に地方では、人口構造や社会資源の偏在、地域ごとの人間関係などが支援のあり方に大きく影響します。
当日はまず、今回の研究会を企画・担当した中島学教授(本学心理学科)から、何を目的にして行われた研究会なのかの趣旨説明が行われました。
その後、本学心理学科の安西敦教授から「弁護士付添人による環境調整活動と家裁調査官のケースワークの関係〜地方犯罪学の視点を加えつつ〜」と題した講演が行われました。安西教授は、弁護士付添人による環境調整活動と家庭裁判所調査官のケースワークの関係を中心に、少年の立ち直りを支えるためにどのような支援が必要になるのかを報告しました。家庭、学校、就労先、帰住先など、少年を取り巻く環境に働きかけることの重要性が示され、司法の手続の中で福祉的な支援をどのように位置づけるかが論点となりました。

続くパネルディスカッションでは、「地方における再犯防止と立ち直り支援の課題と可能性」をテーマに、3名の先生方から話題提供がありました。
東洋大学の戸井宏紀先生からは、地方再犯防止推進計画の策定状況や内容をもとに、地域における支援体制づくりの課題が報告されました。再犯防止の取り組みは、刑事政策としてだけではなく、地域福祉や重層的支援体制とも深く関わっています。計画を策定するだけでなく、当事者や地域住民を含めた多様な主体がどのように参画し、計画を実効性のあるものにしていくかが重要であることが示されました。

向井からは、「地方犯罪学の視点から」と題して、犯罪や再犯防止を地域差の観点から捉える必要性について報告しました。再犯防止推進法では、地方公共団体が「地域の状況に応じ」た施策を講じることが求められています。しかし、実際には地域差に関する知見はまだ十分ではありません。そこで、地方と都市の違い、都道府県・市区町村ごとの違いに注目する地方犯罪学の視点が、今後の再犯防止や立ち直り支援を考えるうえで有効であることを紹介しました。

また、広島弁護士会の中村麗子先生からは、広島弁護士会における「よりそい弁護士」制度や司法福祉連携の実践についてご報告いただきました。刑事収容施設からの出所後や地域生活への移行期など、支援が途切れやすい場面で、弁護士が本人に寄り添いながら関係機関と連携していく実践は、地域に根ざした立ち直り支援を考えるうえで重要な示唆を与えるものでした。

全体の質疑応答では、同じ県内でも地域によって社会資源に大きな差があること、地方再犯防止推進計画をどのような指標で評価するべきか、よりそい弁護士制度をどのように広げていくかなど、実務に即した多くの論点について活発な議論が行われました。また、中国地方で見られた地域差の解釈や、施設所在地をめぐるNIMBY(Not in My Back Yardの頭文字)の問題、つまり施設の必要性は理解しつつも、自分の住む地域への立地には反対する姿勢について、地方犯罪学の視点からどう捉えるかについても質問が寄せられました。

全体を通じて印象的だったのは、再犯防止や立ち直り支援は、単一の制度や専門職だけで完結するものではないという点です。司法、福祉、心理、教育、医療、行政、民間団体、そして地域住民が、それぞれの立場から関わることで、はじめて本人の生活を支えるネットワークが形づくられていきます。
また、こうしたネットワークの形は、地域によって大きく異なります。都市部と地方では、利用できる社会資源、移動手段、専門機関へのアクセス、人間関係のあり方などが異なり、同じ「立ち直り支援」であっても、必要とされる工夫は地域ごとに変わります。このように、犯罪や再犯防止、立ち直り支援を地域社会の特徴と結びつけて考える視点が、地方犯罪学です。福山大学心理学科では、これまでも「地方犯罪学に関するプロジェクトが発足しました」や「地方犯罪学研究会の開催報告」などのブログ記事で紹介してきたように、福山大学を一つの拠点として、地方犯罪学の研究と発信を進めてきました。今回の研究集会は、司法福祉の実践と地方犯罪学の視点を結びつけ、地方における再犯防止と立ち直り支援を考えるうえで、非常に意義深い場となりました。
今回の研究集会は、福山の地で、地方における司法福祉の課題と可能性を考える貴重な機会となりました。心理学科としても、司法・犯罪領域に関わる教育研究をさらに進めるとともに、地方犯罪学の視点から、犯罪や非行をした人の立ち直り、そして誰もが暮らしやすい地域づくりについて考えていきたいと思います。
学長から一言:心理学科のスタッフが積極的に協力して本学の社会連携推進センターを会場に開催された、日本司法福祉学会の研究集会の大成功を慶びたいと思います。心理・司法・福祉・地域社会に関する研究者と実務家が集い、熱い議論が交わされたようです。本学の心理学科に所属する犯罪・司法関係分野の専門家の存在が光っています。これからも心理学を中核とした犯罪・再犯防止や立ち直り支援の研究と実践が益々発展することを期待します。




