【生物科学科】イノシシの論文を発表!

生物科学科の石塚講師から新着の論文情報が届きました。イノシシは海を泳いでまで分布を拡大しているようです。石塚講師による紹介です(生物科学科 佐藤淳)。
みなさんこんにちは。生物科学科の石塚です。この度、新たにイノシシに関する論文を発表しましたので、ご紹介いたします。
分布拡大するイノシシ
近年のわが国において、イノシシはさまざまな社会問題を引き起こしています。人里の農作物を荒らし、豚熱などの伝染病を媒介し、時折自動車とぶつかります。このようにトラブルメーカーのイノシシは、日本各地で個体数が急増し、分布域を拡大させつつあります。この分布拡大の一環として、近年ではイノシシが海を泳いで渡って離島に侵入・定着する例が増えています。福山大学周辺の瀬戸内海の島嶼でも、多くの島でイノシシが定着するに至っています。ただし海を泳ぐイノシシには謎が多く、どのように侵入・定着するかについては情報が不足していました。

イノシシは瀬戸内海を北上していた
私が調査地としている香川県小豆島では、イノシシが少なくとも1975年までは絶滅していたものの、2010年頃から島内の目撃例や農作物被害が増加し、周辺の大陸から泳いで侵入していることがわかっていました。そこで私は小豆島に加え、その周囲に位置する岡山県全域と香川県高松市のイノシシのDNAを収集し、小豆島のイノシシがどこからどのように海を渡って侵入・定着したかを調べました。同じ生物科学科の佐藤教授の力も借りて最先端の遺伝解析を行った結果、興味深いことに、遺伝的に異なる2系統のイノシシが四国本島側から北上して侵入したことがわかりました。香川県の内陸部ではイノシシの個体数密度が高いことが裏付けられており、四国本島の個体数密度の高さが島への侵入の原因になったと考えられます。
野生動物との共存を考える
私はこれまでニホンザルの研究を実施することが主でしたが、私が主宰する「動物生態学研究室」ではサルだけでなくさまざまな動物のフィールド研究を行っています。森でイノシシの堀跡を数えたり、動物の食を支えるどんぐりの個数を数えたり。こういった研究は、人間と野生動物が適切な距離を保って共存するための基礎資料になる点で重要です。福山大学では、大学を挙げて「瀬戸内の里海・里山学」に取り組んでおり、生物科学科でもさまざまな里の動物の研究に取り組んでいます。身近な動物を専門的に調べてみたい若い読者の方は、ぜひ福山大学生物科学科を訪ねてみてください。

出版された論文情報は以下のとおりです。
学長から一言:世の中では今、人間の居住地に頻繁に闖入するクマの被害で話題沸騰です。対策には生態研究が欠かせません。同様に、野生動物のイノシシもしっかりと研究することが必要です。かつて絶滅していた小豆島で発見が続き、海を渡って定着したと思われるイノシシの足取りの科学的調査に取り組む生物科学科の石塚講師。動物と人間の平和的な共存のためにも、興味深い研究成果を続々と発表して下さい。期待が大いに膨らみます。






