【海洋生物科学科】イルカの認知に関するかごしま水族館との研究が国際学術誌に掲載

私たちヒトも含めていくつかの動物で、何かを選ぶときに周りの個体の選択に影響されることが知られています。例えばヒトでは、多数派が選んでいるものを自分も選んだり、移動する際に他者が進む方向に行ったりします。そして時には、間違いだとわかっていたり、自分が学習した内容や経験と違っていたりしても、周囲にあわせてしまうことがあります。この「自分の学習内容と違っていても周囲にあわせるのか」が調べられた動物は多くありません。もちろん、イルカもそのようなとき(自分と違う動きを他個体がしたとき)にどうするのか、わかっていません。
そこで、海洋生物科学科の山本知里講師と、かごしま水族館の柏木伸幸学芸員は、ハンドウイルカを対象に、自分の選択を回りに合わせるかどうかを調べる認知実験を行いました。この実験の様子について山本知里講師が報告いたします。(投稿は、ブログメンバーの山岸)
実験を始める前のトレーニングとして、道具(カゴ)を見たら特定の技をするようイルカに教えました。ある個体にはカゴを提示したら技Aをすることを、別の個体にはカゴを提示したら技Bをすることを教えます。つまり、同じ合図(カゴを見せる)でも、イルカによって学習した技は異なります。テストグループの中には、1頭だけ異なる技を学習した個体がいます。このグループに同時にカゴを見せ、イルカがどちらの技をするか調べました。その結果、イルカは多数派または先に反応した個体の技をすることがわかりました。また、途中で技を変える行動も観察されました。これは、イルカは自分の学習や選択に反しても、周囲に行動をあわせることを示唆します。下の図は、途中で行動を変えるイルカの様子です。

認知実験を行うには、その行動を証明するための実験デザインと、それを実施するための事前トレーニングが必要不可欠です。そしてこのトレーニングは、水族館の飼育員の方々の協力がなければできません。本研究の成果は、研究者と水族館飼育員の連携によるものです。

今回の成果をまとめた論文が、この度Animal Behaviour誌に掲載されました。
今後さらに研究を進め、まだ謎の多いイルカの認知能力について明らかにしていきたいと考えています。
【論文情報】
掲載誌: Animal Behaviour
著者: Chisato Yamamoto, Nobuyuki Kashiwagi
タイトル: Effects of others’ actions on own action choices in common bottlenose dolphins
掲載情報: https://doi.org/10.1016/j.anbehav.2025.123278
Share Link: https://authors.elsevier.com/a/1lWnRmjMA414 (9/19まで論文の内容や映像を閲覧できます)
学長から一言:海洋生物科学科の山本知里講師がかごしま水族館の柏木伸幸学芸員と協力して行ったイルカの認知に関する実験が良い結果を生んだようです。その結果をまとめた論文が国際的な動物行動学の専門誌Animal Behaviourに掲載されたのは、まことに素晴らしい。心からお慶びを申し上げます。イルカの専門家として次々とイルカに関する謎を解き明かして行ってください。期待しています。






