【国際交流】韓国地方財政学会「日韓交流セッション」で研究報告してきました!

国際経済学科の足立です。国際経済学科の鈴木伸講師から、韓国地方財政学会で研究報告についてレポートしてもらいます。

発表会場の様子
アニョハセヨ~!チョヌン、スズキ・シンラゴハムニダ!(国際経済学科の鈴木です。)
私の属している日本地方財政学会は、30年間にわたり韓国地方財政学会と交流を行っており、毎年両学会の大会で「日韓セッション」を設けて議論を深めています 。
去る2025年12月12日(金)、ソウル市内の韓国地方財政共済会ビルにて「韓国地方財政学会冬季大会」が開催されました。今回は、京都府立大学の川瀬光義先生、埼玉大学の高端正幸先生による引率のもと、宮城大学の上森貞行先生とともに、私、鈴木が日韓セッションでの研究報告を行ってまいりました 。

ネームプレートも作っていただきました。
海士町の事例から見る「関係人口」の可能性
今回、私が発表したテーマは、島根県海士町(あまちょう)における関係人口創出に関する事例です 。現在、日本も韓国も急速な人口減少と首都一極集中という共通の深刻な課題に直面しています。そうした中、両国では単に住民票に基づく「定住人口」を増やす政策ではなく、仕事や観光、プロジェクトを通じた地域との関わりを重視する新しい人口概念が生まれています 。韓国では、一定の滞在時間を基に算出される「生活人口」という概念が導入され始めています。一方、日本では地域との関わりの深さに着目した「関係人口」という概念が注目されています。
日本の関係人口のモデルケースとして、海士町の取り組みは非常に示唆に富んでいます。かつて財政破綻の危機にあったこの離島の町は、町役場と中間支援組織「島前ふるさと魅力化財団」がタッグを組み、「高校魅力化プロジェクト」や「大人の島留学」などを通じて島の魅力を向上させました。その結果、現在では東京などの大都市圏から多くの若者を惹きつけています 。

島根県海士町(2025年11月1日訪問)
私は地方財政学の視点から、こうした柔軟なスキームの構築や、制度を運用する人材マネジメント(公務員と外部人材の協働)についてヒアリング調査の結果を報告し、韓国の「生活人口」政策に対する示唆を提示しました 。
なお、発表にあたっては、忠南研究院のイ・ミンジョン先生に通訳の労をとっていただきました。専門的な内容を的確に伝えていただき、心より感謝申し上げます 。
日韓共通の課題としての「地方消滅」
発表後の質疑応答では、韓国の研究者の方々から非常に熱心な質問が寄せられました 。韓国でも地方の人口流出を抑えることは喫緊の課題となっており、「海士町のような取り組みは、韓国の一般的な農村部(郡部)でも応用可能か」「中央政府からの財政支援と、自治体の自主財源のバランスはどうなっているのか」といった、制度や文化的背景の比較に関する鋭い質問が飛び交いました 。

研究発表する鈴木
今回の学会参加を通じての大きな気づきは、韓国の研究者たちも日本と全く同じ危機感を共有しているという点です。しかも韓国は軍事政権時代が長かったこともあり、地方自治がはじまってから30年しかたっていないため、制度に関する発展の余地が残っています。特に2021年より「地方消滅対応基金」を創設し、89もの人口減少自治体に補助金が配られている。その使途に関しても模索している韓国の地方自治関係者にとっては、海士町のような「現場発」のモデルへの関心は予想以上に高く、国は違えど、地域を何とかしたいという熱意は共通していると肌で感じました。今後も日韓の比較研究を深めていく必要性を強く再認識しました 。
韓国のおもてなしと熱気

懇親会の雰囲気
学会の前後は、先方が美味しい韓国料理の数々をごちそうしてくださいました。特に夕食はミシュラン掲載店の「ヨッチョンフェグァン(駅前会館)」で大宴会です。「韓国のおもてなし」は非常に熱烈で、テーブルいっぱいの料理を囲みながら、研究の話から互いの文化の話まで、会話が尽きることはありませんでした。また食器や化粧品、ワイヤレスイヤフォンなど、お土産もたくさんいただきました。

元祖新村ソルロンタンにて。前のスープだけと思っていたら、後ろの鍋も出てきてびっくりしました。

ユッケとこの店オリジナルの汁気のないプルコギ。この他にもポッサム(蒸し豚)や海鮮炒めなど、一年分の韓国料理を食べた気がします。

スポンサーである韓国地方財政共済会のロゴが入った韓国食器です。

日本地方財政学会メンバーと京義大学校李載殷名誉教授
二次会の後に我々日本地方財政学会メンバーに加え、韓国地方財政学の権威である李載殷先生とお写真を撮りました。短い滞在でしたが、研究・交流ともに非常に実り多い出張となりました。来年5月に開催される日本地方財政学会では韓国メンバーが来日されるとのことなので、私たちもしっかりホストの役目を務めたいと思います。今回の知見やネットワークを、今後の研究や学生への教育にも還元していきます。
学長から一言:日韓の地方財政学会が続けている学術交流の一環として、先日ソウルで開催された韓国側の学会で報告を行った国際経済学科の鈴木伸講師、お疲れ様でした。「日韓セッション」において、隠岐の島の海士町において過疎化・人口流出問題に対する効果的対策はきっと同じ問題を抱える韓国側参加者の皆さんの注目を集めたことでしょう。来年は、日本での学会がホスト役とのこと。両学会の交流の発展を祈ります。






