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学長短信(松田文子 学長) 
Rector Statements by Fumiko Matsuda President

「学長短信」は、牟田泰三前学長が始めたもので、福山大学の大学運営を、どのような考えに立って、どのような方針で進めているのか、などについて、学長から教職員の皆さんに伝えるために、メールで届けているものです。

「学長短信」は、学内の皆さんに読んで頂くだけでなくて、大学外の方々にもこれを読んで頂いて、福山大学のことをより多く知って頂きたいと思います。そこで、前学長のものも含め、「学長短信」のバックナンバーを全て福山大学ホームページにアップすることにしました。

学外の皆さんにも、是非この機会に読んで頂きたいと思います。

☆ 学長短信 ☆ No.41 2013.07.01

今朝は雨こそ降っていませんが、梅雨空ですね。このようなお天気だと憂鬱になる、という人は結構います。しかし快晴のさわやかなお天気でも気分の晴れない人もいます。理由を聞いても、何がそんなに悲しく憂鬱なのかわからなかったり、そこまで自分を責めなくてもと感じられたり、そもそも何にも興味を示さず人を避けて引きこもっているので理由も聞けなかったり・・・。このような抑鬱といった気分変化が顕著なとき、鬱病と呼ばれます(医学的に正確な定義ではありません)。そしてこれが増えています。25歳前後と50歳代に始まることが多いといわれていましたが、最近の大手・中堅企業を対象とした調査では、メンタルヘルス面での不調者が増えており、それも圧倒的に20代と30代という回答でした。学生の留年や退学の理由にも、鬱病が疑われるものがかなりあります。せっかく卒業・就職したのに鬱状態が長引き、退職を余儀なくされた卒業生もいます。多くの精神科クリニックや心療内科は、ゆっくりと診察してもらうのが難しいほど、患者であふれがちです。当人にとっても、家族や企業にとっても、社会全体にとっても、決して好ましいことではないでしょう。

ところで、国民全体に広がっている深刻な身体の病気に糖尿病があります。血液中のブドウ糖の濃度が高すぎる状態の続く病気で、血管、神経、網膜、肝臓などに障害が生じ、様々な合併症が引き起こされます。これもこの40年間に急増しました。その原因は、人類が何百万年もの間苦しんできた飢えに対する生命の仕組みが、突然やってきた飽食の時代に合わなくなった故だといわれています。

では、鬱病はどうなのでしょう。何か人類が生き延びていく上で意味があった、あるいは今もある、ということはないのでしょうか。最近、そのような説に出会いました。私流に再解釈してご紹介します。

糖尿病に端的に示されているように、現代の人間の遺伝子が最も適応していた時代は百万年以上も前の世界であるといわれています。その時代において「本来有利な資質が現代の環境では裏目に出ており」「その結果、現代では病気と診断される」というのです。単純化した話として、一人ひとりとしては弱いヒトが、タンパク源を得るために、たとえば大きなマンモスに仲間13人で立ち向かい、3人が踏みつぶされ、マンモスには逃げられたとします。ここで、仲間の死を悲しむ感情のない(すなわち悲しみ遺伝子を持たない)者ばかりであったら、空腹に耐えきれずまた同じような事を繰り返し全滅してしまうでしょう。しかし残ったヒトのうち5人は仲間の死をひどく悲しみ(悲しみ遺伝子を持っていた)、次の狩りどころではない、お腹がすいたら、手近な木の実で我慢し、ひたすら嘆き悲しんでいたとします。しかし、悲しみの感情を表出し合ううち、今までのやり方に問題があったのではないか、という気持ちになり、それから徐々に「ではどうするか」と言う方向に考えが向き、ゆっくりとアイデアが出てきて、・・・成功を収め、栄養が手に入り、子孫は繁栄・・・「三年寝太郎」の世界ですね。ところが、言語が発達してくると、状況をテキパキと言語で伝達した方がずっと効率的、いつまでも悲しみに沈んで行動停止しているのは社会的不適応、ということになってきます。そして今や、世の中はIT時代、スピード重視の成果主義です。「本来有利な資質が現代の環境で裏目に出ており」「その結果、現代では病気と診断される」と考えるのも、あながち的外れではないのではないでしょうか。鬱病の人は、現代社会が、ずいぶんと本来のヒトにとって不自然になっていることを身をもって示してくれているのかもしれません。鬱状態の人を見る目が優しくなりませんか。

参考図書:
(財)労務行政研究所「労務時報」2010年 第3781号
「企業のメンタルヘルス対策に関する実態調査」
http://www.rosei.or.jp/research/pdf/000008212.pdf
野村総一郎著 「うつ病の真実」 日本評論社 2008年


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