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学長短信(松田文子 学長) 
Rector Statements by Fumiko Matsuda President

「学長短信」は、牟田泰三前学長が始めたもので、福山大学の大学運営を、どのような考えに立って、どのような方針で進めているのか、などについて、学長から教職員の皆さんに伝えるために、メールで届けているものです。

「学長短信」は、学内の皆さんに読んで頂くだけでなくて、大学外の方々にもこれを読んで頂いて、福山大学のことをより多く知って頂きたいと思います。そこで、前学長のものも含め、「学長短信」のバックナンバーを全て福山大学ホームページにアップすることにしました。

学外の皆さんにも、是非この機会に読んで頂きたいと思います。

☆ 学長短信 ☆ No.23 2012.03.01

「チェスのチャンピオンは有能な国防大臣になるか」

「平和な小さな国が,好戦的で大きな隣国に脅かされている場面を想像してみよう。その小さな国は,歴史的にも気質的にも軍事的にも,自国を守れるような態勢はできていない。しかし,国民の中にチェスの現世界チャンピオンがいる。そこで,小さな国の総理大臣は,自分の国に残された唯一のチャンスは好戦的な隣国をうまく出し抜くことにあると決断し,そのチェスのチャンピオンに国防の責務を引き受けるように求めた。総理大臣は,このチェスのチャンピオンこそがきわめて知的で熟達した問題の解決者であり,戦術に長けた優秀な戦略家であるに違いないと考えたのである。さて,このチェスのチャンピオンは,はたして隣国の侵略から自国を守ることができるのだろうか」

この話は,下記の文献から引用した思考実験の材料です。日本であれば,チェスではなく碁や将棋の方が身近ですが,いくら防衛大臣の人材不足であっても,碁や将棋の世界からスカウトしようとはちょっと思わないでしょう。最近某永世棋聖に勝利したコンピューター将棋ソフト「ボンクラーズ」に国防を任せてみようか,とも思わないでしょう。

ある領域における熟達者は,その領域固有の知識・技能を究め,さらにその領域で未知のことを探求する方略も身につけていることでしょう・・・「ボンクラーズ」のように。しかし,他の領域の課題解決に関しては「ボンクラ」かもしれません。ところで,変化の激しい現代に生きる若者は,ある領域についてある程度の熟達者であると同時に,いざとなったら別の新しい領域について速やかに賢く学ぶことのできる知的初心者(intelligent novice)でありたいものです。それは,福山大学のミッションである「地域の中核となる一般的職業人の育成」で目指すものでもあります。知的初心者を育てるにはどのような教育法がよいのか,という考察はまた別の機会にするとして・・・

先日の本学の教養講座で,川口淳一郎先生が「はやぶさ」にまつわるお話を熱く熱く語ってくださいました。個性とインスピレーションを活かす不屈の精神を強調されたのが印象的でした。そして研究所には,その精神力を試すような意地悪な人もたくさんいて,たとえば川口先生がテニスを始めると「テニスみたいなことをしてるね」,プロジェクトを立ち上げて難問解決に知恵を絞っていると「プロジェクトに似たことをしているね」と,言われるのだそうです。それを聴いたとき,すぐ私の頭に浮かんだフレーズは,「松田さん,学長に似たことをしているね」。

私が知的初心者であるかどうかが,本学改革の一つのキーポイントなのでしょう。私にはなかなか重い川口先生の講演でもありました。

参考文献:J. T. ブルーアー「授業が変わる―認知心理学と教育実 践が手を結ぶとき―」北大路書房 (p.45から引用)


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