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学長短信(松田文子 学長) 
Rector Statements by Fumiko Matsuda President

「学長短信」は、牟田泰三前学長が始めたもので、福山大学の大学運営を、どのような考えに立って、どのような方針で進めているのか、などについて、学長から教職員の皆さんに伝えるために、メールで届けているものです。

「学長短信」は、学内の皆さんに読んで頂くだけでなくて、大学外の方々にもこれを読んで頂いて、福山大学のことをより多く知って頂きたいと思います。そこで、前学長のものも含め、「学長短信」のバックナンバーを全て福山大学ホームページにアップすることにしました。

学外の皆さんにも、是非この機会に読んで頂きたいと思います。

☆ 学長短信 ☆ No.11  2011.03.20

セレンディピティはあなたの手に

3月20日の今日は,卒業式でした。東日本大震災でなくなられた方にはこころより哀悼の意を表し,今なお見通しの開けない苦境におられる多くの被災者の方にはこころよりお見舞いを申し上げ,そして私達がここに無事卒業式を迎えることが出来たことにこころより感謝し,次のような式辞を述べました。

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皆さん,ご卒業おめでとうございます。在学中にはたくさんのことを経験し学び,多くの人間関係を築かれたことと思います。それらを宝として,皆さんがこれから大きく花開かれることを,心から期待しています。そしてご臨席いただいておりますご家族の皆様,本日は誠におめでとうございます。ご家族の皆様の長きにわたる物心両面でのご支援にこころから感謝申し上げます。

さて,これから大学を巣立って行かれる卒業生のみなさんを待っているのは,時に荒々しく歯をむき出し,時に陰鬱に顔をそむけもする厳しい実社会です。アルバイトやボランティア活動等でかいま見ていた実社会とは,相当に違っているでしょう。これまで皆さんは大学に限らず,小学校・中学校・高等学校などの教育機関においては,結果よりはプロセスが大切にされ評価される,そういう状況の中で過ごしてきたと思います。「負けたけれども,よくがんばっていい試合だった」とか,「テストの点は今ひとつだけれど,平素真面目に取り組んでいたので」とか。しかし,これから皆さんが踏み出そうとしている実社会はどうでしょうか。きっとプロセスよりももっと成果が重視されることになるでしょう。今の皆さんは,新しい社会に飛び立つ希望と,社会に出てひょっとしてやってしまうかもしれない失敗への不安との狭間にいるかもしれませんね。そこで今日は,「現代社会は,失敗を失敗としない,セレンディピティ(serendipity)を持った若者を待っている」というお話をして,卒業生のみなさんへのはなむけとしたいと思います。

セレンディピティという言葉は,欧米人は大好きなのですが,日本ではまだあまり使われていません。でも,昨年カップリング反応でノーベル化学賞を受賞された根岸英一先生も鈴木章先生も,それぞれお話の中で使っておられたので,日本でもちょっと広まっているようです。セレンディピティとは,掘り出し物上手とか,タナボタ式に得をする性格とか,特に自然科学の分野では,失敗や偶然から思わぬ発見や成功を収める能力を指します。それは能力ではなく,幸運という「運」の問題ではないかと,皆さんは思われるかもしれませんね。

ところで,「失敗から思わぬ発見や成功を得る」というときの失敗とは何でしょうか。国語の辞書を引くと「やり方が悪くて,予定していた成果が上がらないこと」というようなことが書いてあります。この定義から,実は失敗をなくすことが出来ることがわかります。やり方が悪ければ,どのようになぜ悪かったのか,それを改善してさらに試みればよいので,そのチャレンジを続けている限り,失敗ではありません。人間は,あらゆる状況から学び,賢くなることの出来る動物でもあります。セレンディピティに言及したノーベル化学賞の鈴木先生や根岸先生も,「目標に向けての根気強い努力」の重要性を,若者に向けて繰り返し述べておられます。

私が言いたいことが,わかってきていただいているのではないでしょうか。昨今の厳しい社会は,実社会に本格デビューした若者をいきなり失敗へと導くことがあるかもしれません。しかし見方を変えれば,実社会は失敗する若者,けれども失敗しても簡単にはくじけない,そういう若者を探し求めているのではないでしょうか。そのような若者に,掘り出し物や,ちょっとした発見や,思いがけない幸運を投げ与えたいと待っているのです。

皆さん,福山大学の教育理念である全人格教育を受けた皆さんは,福山大学で学んだことを誇りとして,社会に出ても失敗を失敗とせず,その状況から学び,根気強く努力を続け,セレンディピティをわが手に入れましょう。そのようにしてあなたの人生の充実と社会への貢献を目指してください。心から期待しています。また,三蔵祭の時などには,大学にホームカミングして,私達教員にそのプロセスを報告していただけないでしょうか。それは教師にとってこの上ない喜びです。

卒業生のみなさん。皆さんのこれからのご活躍をこころから願って,式辞を終わりとします。


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