スマートフォン用タイトル画像

福山大学 > 大学概要 > 学長短信(松田文子 学長) > ☆ 学長短信 ☆ No.9

学長短信(松田文子 学長) 
Rector Statements by Fumiko Matsuda President

「学長短信」は、牟田泰三前学長が始めたもので、福山大学の大学運営を、どのような考えに立って、どのような方針で進めているのか、などについて、学長から教職員の皆さんに伝えるために、メールで届けているものです。

「学長短信」は、学内の皆さんに読んで頂くだけでなくて、大学外の方々にもこれを読んで頂いて、福山大学のことをより多く知って頂きたいと思います。そこで、前学長のものも含め、「学長短信」のバックナンバーを全て福山大学ホームページにアップすることにしました。

学外の皆さんにも、是非この機会に読んで頂きたいと思います。

☆ 学長短信 ☆ No.9 2011.02.05

☆ 授業の方法について(1)・・・知識の変換

先日の学生と学長の懇談会で,教員の授業に対して,いくつかの厳しい意見が出ていました。本学のように,多くは地域の中堅となる若者を育てる大学の教員は,研究のプロである前に,教育のプロでなければいけません,というか,学長短信No.2で述べたように,プロとしての研究力が教育の力になるのでなければ,あまり意味がありません。釈迦に説法かもしれませんが,教育心理学徒でもある学長として,若干の意見を述べたいと思います。参考になることがあれば幸いです。

ハーバード大学のマイケル・サンデル教授の政治哲学講義をテレビ等でごらんになった人も多いのではないでしょうか。内容はなかなかハイレベルですが,学生は我がこととして授業の中で思考し発言しているのが印象的です。私達に欠けがちで,サンデル教授にあるものは何でしょうか。私達も福山大学のサンデル先生になれるのでしょうか。

私は学部でまだ一つだけ授業を持っており,科目名は「授業心理学」です。ブルーアー著「授業が変わる―認知心理学と教育実践が手を結ぶとき―」(原題:Schools for thought. A science of
learning in the classroom.)を教科書にしています。授業の準備のために毎年読み返し,その都度感動しています。そのなかで,教え方の上手な教師のもっているものとして,次の4つ「授業科目内容に
関する知識」,「一般的な教授技能(たとえば,発問の仕方,間の取り方など)」,「生徒の反応に対する鋭い感受性」,そして「それらを授業中の瞬間瞬間に統合する力」をまずあげています。加え
て「授業を想定した教科内容の知識(pedagogical content knowledge)」を,忘れられがちだが最も重要なものとしてあげています。「授業を想定した教科内容の知識」には,最も効果的な例示,類推,説明に関する知識も含まれます。生徒がどのように誤解しがちであるか,それはなぜか,その克服にはどのような支援をすればよいのか,についての実践的知識も含まれます。このような知識を手にするためには,教師は,たとえ自分が教科内容の熟達者であっても,初心者のような見方が出来なければなりません。教師は持っている知識を陳述するのではなく,学習者の既有知識・背景知識・思考様式・興味・関心等に合わせて,知識を一度変換して提示する必要があると述べています。

学生がどのように理解したり誤解したりするかに思いをはせて,周到に質問や例示や説明を用意するなら,私達もサンデル先生に近づけるでしょう。学長短信No.8では,この4月から本格稼働する福山大学教育システムについて述べました。そのシステムの中の一つ一
つの授業がどのように行われるかが,このシステムの成否の鍵であり,それは本学に入学した学生が地域の中堅となる力を持って卒業するかどうかの鍵の最も重要な一つでもあります。これまでよりさ
らに一ランク上の授業を目指して,みんながんばりましょう。

ちなみに,「授業心理学」の受講生がみんな教員免許を取るわけではありません。せいぜい3分の1程度です。けれども,相手に合わせて「知識の変換」をすることが重要なのは,教育に携わる者はもちろん,セールスパーソンになっても,商品開発に携わっても,どんな仕事についてもとても重要なことだということを,毎回のように例を変えて学生にも話し,「知識の変換」が汎用力になるように努力しています。次回は,汎用力について書いてみたいと思っています。


PAGE TOP