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学長短信(松田文子 学長) 
Rector Statements by Fumiko Matsuda President

「学長短信」は、牟田泰三前学長が始めたもので、福山大学の大学運営を、どのような考えに立って、どのような方針で進めているのか、などについて、学長から教職員の皆さんに伝えるために、メールで届けているものです。

「学長短信」は、学内の皆さんに読んで頂くだけでなくて、大学外の方々にもこれを読んで頂いて、福山大学のことをより多く知って頂きたいと思います。そこで、前学長のものも含め、「学長短信」のバックナンバーを全て福山大学ホームページにアップすることにしました。

学外の皆さんにも、是非この機会に読んで頂きたいと思います。

☆ 学長短信 ☆ No.78 2016.05.01

資本主義はどうなる?

5月に入り、まばゆいばかりの新緑の中、キャンパス内のつつじが、
色ととりどりに咲き乱れていますが・・・
 熊本地震で亡くなられた方々に心から哀悼の意を表し、被災された
方々に1日も早く落ち着いた日常が戻ってきますよう祈念しています。




さて、経済学者に衣替えしたわけではありませんが、興味深い本2冊
に巡り会ったので・・・。
 学長短信No.73でも紹介した、本学教養講座で講演して下さった大久
保秀夫氏が「みんなを幸せにする資本主義~公益資本主義のすすめ~」
を最近刊行されました。現在の資本主義は、金融が「主」、実体経済が
「従」の金融資本主義(株主資本主義)になっており、それが行き過ぎ
るとゼロサム社会を生み出し、新たな価値を生み出すことなく、価値が
一方から他方に移動するだけなので、格差社会になり中間層が没落する
と、切々と訴えておられます。そして、いずれ遠くない将来に、世界経
済は成長の限界に近づかざるを得ないと思われるが、企業は「公器」で
あって、「社員」のものでもあり、「顧客」のものでもあり、「地域」
のものでもあり、そのように社会全体を大切にすることによってのみ、
企業は利益を永続的に得ることが出来、結果として出資してくれた株主
にも利益を還元できるというのが、大久保氏の公益資本主義の主張で
す。大久保氏のいわれるようにこれはかつて「三方良し」の商売を理想
としてきた日本人にとって比較的なじみ深いもので、したがって大久保
氏は、世界経済が破綻する前に、日本の経営者は公益資本主義を世界に
向かって実践・提示する義務があると。そして、それを実現するため
に、大久保氏は日本と新興国の教育に期待されています。
 この本の少し前に、ジェレミー・リフキン著「限界費用ゼロ社会~<
モノのインターネット>と共有型経済の台頭~」が出版されています。
垂直統合型の資本主義体制は、コンピュータの指数曲線を描いての進歩
により衰退を免れることは出来ず(すでに衰退し始めている)、共有型
経済(シェアリング・エコノミー)が代わりに台頭すると主張していま
す。すなわち、分散・共同・水平展開という性質を持ったIoT(Internet
of things:モノのインターネット)は、統合されたグローバル・ネット
ワーク上であらゆるモノをあらゆる人に結びつけ、経済の全般にわたっ
て、多様な財とサービスの生産と流通の限界費用(財やサービスを1ユ
ニット増加させるための費用)を、遠くない将来にほぼゼロにまで引き
下げるだろう。資本主義体制下では、私利の追求のため、ビラミッド型
の巨大な企業が有利だが、IoTネットワーク上では、通信テクノロ
ジー、エネルギー源、輸送形態が根本から変わり、それらの効率性と生
産性を極限まで高めれば、資本主義の下での少数の巨大な企業への経済
力集中ではなく、共有型経済の下での共同型コモンズが出来上がると。
資本主義が利益のために効率化を推し進めれば推し進めるほど、(皮肉
にも)限界費用ゼロ社会に近づいていくわけで、その結果共有型経済に
移行していくはず(すでに移行しつつある)というのです。
 ICT関連設備・機器の設置や保守等に巨額な出費を毎年余儀なくされ
ている大学の学長としては、えっ?えっ?えっ?なのですが、しかし、
確かにパソコンもスマホもどんどん高性能・多機能かつ低価格になって
おり、音楽もニュースも図書もどんどん無料に近くなっており、大規模
公開オンライン講座MOOCが普及すれば、・・・と考えると、ウーンとう
なってしまいます。
 2冊の本の主張の目指すところは、結構近いのですが、その論理はず
いぶん違っています。いずれにせよ、大学教育に携わる者、これからの
若者に付けるべき能力や態度・指向性について、深く考えざるを得ませ
ん。

参考図書
大久保秀夫著「みんなを幸せにする資本主義~公益資本主義のすすめ
~」東洋経済新報社 2016年
ジェレミー・リフキン著 柴田裕之訳「限界費用ゼロ社会~<モノのイ
ンターネット>と共有型経済の台頭~」NHK出版 2015年


別件のよい便りです。
 科学技術振興機構(JST)による平成28年度日本・アジア青少年サイエ
ンス交流事業(さくらサイエンスプラン)に、本学と3月に協定を締結
したベトナム国家農業大学との「瀬戸内海で生まれたつくり育てる漁業
を体験する」プログラムが採択されました。これで3年連続の採択とな
ります(今回採択された私立大学は、中国四国九州では本学だけです。
詳細は、
http://www.jst.go.jp/pr/info/info1180/
ベトナム国家農業大学については、学長室ブログもどうぞ。
http://blog.fuext.fukuyama-u.ac.jp/2016/04/blog-post_26.html


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