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学長短信(松田文子 学長) 
Rector Statements by Fumiko Matsuda President

「学長短信」は、牟田泰三前学長が始めたもので、福山大学の大学運営を、どのような考えに立って、どのような方針で進めているのか、などについて、学長から教職員の皆さんに伝えるために、メールで届けているものです。

「学長短信」は、学内の皆さんに読んで頂くだけでなくて、大学外の方々にもこれを読んで頂いて、福山大学のことをより多く知って頂きたいと思います。そこで、前学長のものも含め、「学長短信」のバックナンバーを全て福山大学ホームページにアップすることにしました。

学外の皆さんにも、是非この機会に読んで頂きたいと思います。

☆ 学長短信 ☆ No.74 2016.02.01

他者視点に立って支援する

昨年の3月の学長短信では、幼児は他者視点を取りにくく、年齢と共に発達する(「先生」と呼ばれる職種に就いている人はいつまでも発達しがたい傾向あり・・・)という話を書きました。

さて、もう昨年のことになってしまいましたが、1年生必修の教養ゼミの中で年に5回程度行われる教養講座が、11月には立て続けに2回行われました。大久保秀夫先生(公益財団法人CIESF理事長、株式会社フォーバル代表取締役会長)と川本隆史先生(国際基督教大学教授、東京大学名誉教授)の講演です。特に関連を考えてこのお二人の講演が近い間隔で続けて行われたわけではないようですが、実践家と理論家のお二人の主張には、これからの教育を考える、新年にご紹介するにふさわしい共通性があったように思います。

今日は申年にちなんで、チンパンジーのお話です。チンパンジーも他者(他猿?)視点を取って、他者を助けたり、支援したりするのでしょうか。最近の研究によると、チンパンジーも相手の要求に従って、援助行動をするそうです。たとえばチンパンジー2匹(AとB)に、お互いによく見える隣り合った部屋に入ってもらい、Aには手の届かないところにジュースの入った容器を置き、Bの部屋にはステッキを置きます。すると、Aの要求に応じて、BはステッキをAに渡してあげるのです。またいくつもの道具の中から、状況に適した道具を選んで渡すことさえします(この場合、Bには直接的なメリットや報酬は何も用意されていません)。さすが類人猿のチンパンジーです。でも、さらに研究結果の示すところでは、このような援助行動には、相手からの要求が必要であり、親子のような血縁関係でもない限り、チンパンジーが他者視点に立って、自発的に助ける、ということはないのだそうです。チンパンジーに比べると、人間はお節介なのですね。

生物としてのヒトは、一人では弱い存在ですが、集団として強い生物として存在し続け、進化の頂点に立ってきました。自発的に互いに助け合い、協力し合うことは、しばしば良い結果を生み出します。しかし、そのためには、他者視点を取って他者の要求、目標、あるいは感情を読み取る知性と感性、そしてたとえ他者からの要請がなくても必要に応じて援助行動を取ろうとする態度、加えて援助行動の技能と実行力が必要です。本学の目標設定型教育システムでは、全領域で知識と技能の他に態度(とりわけホスピタリティー)の目標をあげ、その目標達成のために、「人間関係を作りながら学ぶ」をキーワードにしています。教職員の皆さんには、今一度、「人間関係を作りながら学ぶ、福山大学目標設定型教育システム」の意味をかみしめていただければ、と思います。

 

参考資料
 山本真也 (2015)「動物の勇気-動物に利他的なヒーローはいるのか-」心理
学ワールド, No. 71, p. 25-26, 日本心理学会。
 Yamamoto, S., et al. (2012) Chimpanzees' flexible targeted helping based on an understanding of conspecifics' goals. Proceedings of the National Academy of Sciences. Vol. 109, No. 9, p. 3588-3592.


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