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学長短信(松田文子 学長) 
Rector Statements by Fumiko Matsuda President

「学長短信」は、牟田泰三前学長が始めたもので、福山大学の大学運営を、どのような考えに立って、どのような方針で進めているのか、などについて、学長から教職員の皆さんに伝えるために、メールで届けているものです。

「学長短信」は、学内の皆さんに読んで頂くだけでなくて、大学外の方々にもこれを読んで頂いて、福山大学のことをより多く知って頂きたいと思います。そこで、前学長のものも含め、「学長短信」のバックナンバーを全て福山大学ホームページにアップすることにしました。

学外の皆さんにも、是非この機会に読んで頂きたいと思います。

☆ 学長短信 ☆ No.69 2015.09.01

ボトムアップとトップダウン

「一休さんは、ごはんを食べるときははしを使うが、はしを使うときははしを使わず真ん中を渡った」

この文章は、私が教育心理学の授業で「文章を読むこと」について話しをするとき使っていた例文です。「一休さんは、ごはんを食べるときははしを使うが、」までは、難なく読めますが、後半に入って「?」と思い、「ははん」と納得するまでにちょっと時間がかかります。文章を読むとき、私たちは、一文字一文字を認識し、単語などのひとまとまりの意味を認識し、言語的、文法的処理をして命題を構成し・・・というように下から順々に積み上げていくボトムアップだけでなく、読み進めるごとに既有知識やこれまでに読んだところを
解釈して脳内に内部モデルを作り、それを使って、これから先の意味を予測することにより、すなわちトップダウンの働きにより、多くの場合は長い文章もすらすらと読んでいるわけです。トップダウンがうまく働かないと、最初の例文のように音読できても意味がつかみがたいことになります。例文の場合は、前半を読んだ時点で作った内部モデルによる後半の予測が裏切られ、一休さんの話を思い出してようやく理解に至ります。

JST(科学技術振興機構)ニュースに、戦略的創造研究推進事業による、カリフォルニア大学の2人の日本人研究者の大変興味深い研究が紹介されていました。脳の活動が外界からの入力(ボトムアップ)だけでなく、それ以前の学習や経験によって得られた脳内部から生じる予測や期待、または注意といったトップダウン情報により左右されることは、上記の簡単な「読み」の例からも想像できますが、彼らは、マウスで、脳の多様な神経細胞群種を体系的にかつ長期的に観察する手法を確立し、それを使って、視覚情報による学習課題をマウスにやらせた場合、学習と共に大脳視覚野に対するトップダウン入力の影響が強まり、逆にボトムアップ入力は減少することを見いだし,脳の情報処理形態の変化を神経細胞レベルで明らかにしました。

学習や経験によって内部モデルが作られ、そのトップダウンによって、新しい外からの入力の処理が単純なボトムアップより賢く効率的に処理される、と一般的には言えるかもしれませんが、たとえば悲観的に物事を捉える内部モデルを強固に持っている「鬱」の場合は、壊したい内部モデル、そもそも出来上がってほしくない内部モデルを作ってしまったとも考えられます。そう考えると、この研究の今後の成果の一つとして、「頑固」な困った思考傾向や態度の発生機序とそれにもとづく予防法や治療法が、神経細胞レベルで明らかになる
ことが期待されそうですね。

 

学長のような仕事をしていると、ボトムアップとトップダウンのありようにかなり神経を使うものですから、ついつい、この研究に魅入られました。

 

参考資料
 「学習により大脳視覚野での情報処理形態が変化する仕組みを実験で解明」
科学技術振興機構報 第1114号(平成27年7月14日)
http://www.jst.go.jp/pr/info/info1114/

 

別件です。
教員の受賞がありました。
生命工学部 佐藤淳准教授が、日本哺乳類学会英文誌Mammal Studyにおける論文賞を受賞。2014年に掲載された論文の中で最も優れた論文として選ばれました。おめでとうございます。詳細は、
学長室ブログ:http://blog.fuext.fukuyama-u.ac.jp/2015/08/blog-post.html
生物工学科HP:http://www.fukuyama-u.ac.jp/biological-eng/entry-2391.html


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