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学長短信(牟田泰三 前学長) 
Rector Statements by Taizo Muta President

「学長短信」は、牟田泰三前学長が始めたもので、福山大学の大学運営を、どのような考えに立って、どのような方針で進めているのか、などについて、学長から教職員の皆さんに伝えるために、メールで届けているものです。

「学長短信」は、学内の皆さんに読んで頂くだけでなくて、大学外の方々にもこれを読んで頂いて、福山大学のことをより多く知って頂きたいと思います。そこで、前学長のものも含め、「学長短信」のバックナンバーを全て福山大学ホームページにアップすることにしました。

学外の皆さんにも、是非この機会に読んで頂きたいと思います。

☆ 学長短信 ☆ No.35 2010.05.25

☆ リーダーシップについて(2)

3.リーダーシップの要件

リーダーシップが発揮されるためには、組織が、リーダーシップを受け入れるための要件を満たしていなければなりません。その要件とは何でしょうか。先ず、リーダーがビジョン(目標)を提示し、目標達成のための小目標を段階的に示し、目標達成の手順を説明する必要があります。組織の構成員はこのビジョン(目標)を共有することが大切です。それぞれの下部組織のリーダーは下部組織としての目標を設定し、目標に向かって各下部組織が機能するよう努めると共に、その構成員がそれぞれの役割を果たすよう導く必要があります。このような形態のリーダーシップを「ビジョン共有型リーダーシップ」とよぶことにしましょう。以下では、リーダーシップといえばこのことを指すものとします。

リーダーシップの本質は、集団目的をいかに円滑に達成するかにあります。「ビジョン共有型リーダーシップ」では、各下部組織が自主性を持って目標に向かう態勢が重要ですから、権限と責任が適切に下部組織のリーダーに委譲されていなければなりません。

4.リーダーに求められる資質

リーダーが為すべきことは

  • 組織の構成員達に希望を与えること(希望=目標、夢、予言、・・・)
  • 希望に向かって進む構成員を支えること
  • 希望に向かうべく組織を機能させること

です。このようなことを現実に実行して、組織を円滑に目標に向けて導い
ていくために、リーダーに求められる資質とはどんなものでしょうか。

もう40年以上も前に、三隅二不二氏(注5)は、組織を動かすためのリーダーシップに求められる資質について研究しています。この研究では、リーダーの基本的資質を、目標達成力 P(Performance)と組織維持力 M(Maintenance) という二つの項目に絞り込んで調べていますが、科学的な手順を踏んで興味ある結論を引き出しています。

優れたリーダーシップが発揮されるためには、目標達成力 P が優れているだけ、組織維持力 M に長けているだけではだめで、PとMとがバランスよく兼ね備わっていなければならないというのがその結論です。これは、最近の新しい考え方に対する先駆的な研究であったと言ってもいいと思います。

「ビジョナリーカンパニー」、「企業生命力」、「サーバントリーダーシップ」などの著書で述べられていることをごく単純化していえば、リーダーシップに主として求められるものはPであるけれども、これを支えるMなくしてはリーダーシップが機能しないことを主張していると言えると思います。これらの著書では、PとMの強さや内容について少しずつ違ったニュアンスの見解を述べていますが、基本的には同じ方向を向いていると思われます。

リーダーに求められる資質として、私は次の能力を重視しています。

  • 構想力:組織の構成員が、これこそ我々の夢だと納得するような大目標を描き出す能力。
  • 決断力:決断が必要とされた時に、迷わず方向性を指し示すことの出来る判断力、強い意志、勇気、行動力。
  • 理解力:目標達成のために人々が何を考え、どんな工夫をし、どのような困難に出会っているかを素早く的確に見極め理解する能力。この理解力が人々に安心感を与え、リーダーを信頼してついていこうとする行動を生み出す。
  • 使命感:自分の利害を考える前に、組織全体のことを考える精神に支えられていること、則ち、組織に奉仕しているという自覚が必要。そのためには、知力、体力、精神力の充実が不可欠。

5.リーダーシップの欠如

現代社会において、リーダーシップは、到る所で切実に必要とされています。

地球温暖化の問題を考えてみましょう。誰でも重大な問題だと感じています。個人的レベルでいろいろな努力をしている人は沢山います。しかし、この努力をもっと大きな地球規模の取り組みとして組織化しようとするリーダーはいないと言っても過言ではありません。問題があまりにも大きくかつ広範囲に及んでいて、複雑多岐な利害関係で絡み合っているから、リーダーシップをとることがきわめて難しいのです。この問題はひょっとすると人類にとって命取りとなるような大問題かもしれないけれど、結局のところ、リーダーシップの欠如のために、人類の滅亡にまで至ってしまうかもしれません。

6.リーダーシップを育てる

リーダーシップを欠いたまま進むことは破滅への道であるともいえます。私達は、先ず私達の身の回りで、リーダーを育てる努力をする必要があります。往々にして、リーダーシップというのは生まれつきのものであって、リーダーシップのない人間にどんなに教育しても駄目なんだと考える人が多いものです。確かに、よりリーダーシップのある人がいるかと思えば、リーダーシップとはかけ離れたような人がいることは事実です。しかしながら、リーダーシップを欠いている多くの場合に、生まれ育った環境がそうさせている場合があります。リーダーシップは天与の才能ではなくて、はぐくみ育てあげることができるものです。(注6)

(終わり)

参考書

  • (注1)J.W.ガードナー:リーダーシップの本質(加藤幹雄訳、ダイヤモンド社、1993)
  • (注2)J.C.コリンズ、J.I.ポラス:ビジョナリーカンパニー(山岡洋一訳、日経BP社、1995)J.C.コリンズ:ビジョナリーカンパニー(2) 飛躍の法則(山岡洋一訳、日経BP社、2001)
  • (注3)アリー・デ・グース:企業生命力(堀出一郎訳、日経BP社、2002))
  • (注4)R.K.グリーンリーフ:サーバントリーダーシップ(金井真弓訳、英治出版、2008)
  • (注5)三隅二不二:リーダーシップの科学(講談社ブルーバックス、1986)
  • (注6)モーガン・マッコール:ハイ・フライヤー(金井壽宏訳、プレジ     デント社、2002)

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