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学長短信(牟田泰三 前学長) 
Rector Statements by Taizo Muta President

「学長短信」は、牟田泰三前学長が始めたもので、福山大学の大学運営を、どのような考えに立って、どのような方針で進めているのか、などについて、学長から教職員の皆さんに伝えるために、メールで届けているものです。

「学長短信」は、学内の皆さんに読んで頂くだけでなくて、大学外の方々にもこれを読んで頂いて、福山大学のことをより多く知って頂きたいと思います。そこで、前学長のものも含め、「学長短信」のバックナンバーを全て福山大学ホームページにアップすることにしました。

学外の皆さんにも、是非この機会に読んで頂きたいと思います。

☆ 学長短信 ☆ No.31 2010.03.23

☆ 文化創造で世界をリード

かつて、私などが若かった頃ですから、もう40年以上も前のことでしょうか、「日本は先進国の物真似ばかりしていて、独創的なものを創り出すことが出来ない。先進国で生み出されたものを真似し、それを少しばかり応用して安く製品化して世界中に売って歩く商人でしかない。」と言われていたものです。

ところがどうでしょう、この物真似には独自の工夫が加えられるようになり、物作りが精緻化され、日本はむしろ物作りで世界をリードするまでになりました。そうなってくると、物真似であったものは、新たな独創を生み出し、日本でしか開発できないようなものが作り出されるようになってきましたし、物作りはより一層高度化して、日本の匠の技として他の追随を許さないまでになっています。

一方、多くの途上国が、昔の日本をお手本にして、日本と同じような発展の道をたどろうとしています。こうなると、以前と質的に同じことを繰り返していては、日本がこのまま物作りで世界一を続けることは困難になってきます。

物作り世界一の地位を守り且つ高めていく努力はもちろん今後も続けていくとしても、将来の日本のあり方を考えた時、そればかりではなくて、日本独自の新たな道を模索しておくことも大切なことだと思われます。

私は、来るべき時代に日本が世界に貢献できる道の一つは、日本が独自の文化で世界をリードすることだと思っています。

もっとも、日本独自の文化というと、すぐに歌舞伎、浮世絵、禅、茶の湯などをイメージしてしまって、思考停止に陥ってしまう人も多いかと思われますが、私がここで取り上げたいのはそういうことではありません。これらの伝統的な文化も、確かに日本独自の文化には違いないのですが、はるかな過去の遺産に過ぎません。私は、現在ダイナミックに生み出されつつある日本の文化について述べたいと思うのです。新たな日本文化の創造が、将来の世界をリードするに違いないと思うからです。

ところで「文化」とはいったい何でしょうか。辞書を引くと「学問や芸術など、人間の心の働きによって創り出されたもの」と書かれています。この定義に従ってまわりを見まわしてみると、将来世界をリードするような芽が日本でいくらでも生まれつつあるように思われます。

現代の日本が、世界をリードする文化創成の地になりつつあることに気が付いていない人は、案外、多いのではないでしょうか。文化的には日本はまだまだ一流ではないと思われているようです。私はそうではないと思います。

学術文化を測る物差しの一つとして、ノーベル賞を考えてみましょう。日本人のノーベル賞(自然科学分野)受賞者の数は現在12名で、米国の227名、英国の75名、ドイツの68名に比べるとまだ見劣りしますが、アジアではダントツで他を圧倒しています。(日本人受賞者の数は、文学と平和の分野を加えると16名です。)また、21世紀に入ってからの実績では、日本は6人の受賞者を出しており、米英に続く第3位です。すなわち、日本は、21世紀において学術文化を牽引する国としては、すでに十分に機能しており、いまや学術文化の世界の拠点となりつつあると言えると思います。

ノーベル賞受賞者数はほんの一例に過ぎません。いろいろな分野の文化面での日本人の活躍は近年目に見えて活発になっていると思います。

最近、米国などで、日本人のやることはクールだ(かっこいい)と言われているようです。何がかっこいいのかは定かではありませんが、文学、スポーツ、芸能面で、確かに昔の野暮ったさが抜けて、私たち熟年者から見てもかっこいいように思われます。

それと関係があるかどうかはわかりませんが、日本のアニメ文化は世界を席巻しているようです。日本では、20年ぐらい前に漫画ブームがあって、厚さが5センチほどもある漫画週刊誌を若者達が読みあさっているのを見て、私は大変苦々しく思っていました。ところが、今になって思うと、この時期に、アニメの新しい文化が育まれていたのだったと気づくのです。今や日本のアニメ文化は完全に世界をリードしています。アニメ文化は秋葉原文化とも連動し、日本人のやることはクールだということになるのでしょう。

今後日本で期待できそうな文化創造の分野はどんどん広がっていくと思われます。いろいろな学問分野で切り開かれている新領域は、これからの文化創造の宝庫となるでしょう。特に生命科学などの学術分野は、世界をリードし始めていると言えるでしょうし、文芸面でも多彩な人材が育ち、これらの人々が切磋琢磨することによって、世界をリードする文芸文化が花開くかもしれません。

福山大学の教育理念である全人教育を受けた卒業生の皆さんは、これから社会に出て、単に知識を活用して物を作るだけでなく、自ら磨いた心をより高め、新しい文化を創造することに大いに貢献してほしいと思います。

3月20日(土)の卒業式式辞では、このような趣旨のことを申し上げました。


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