
(1) 妊娠期母体への騒音関連ストレス負荷による新生児情動・学習行動への影響
およびセロトニン系神経化学的変化について

その神経伝達物質としての古典的な役割に付け加えて、セロトニンは胎生期からの神経系の発生・発育に機能しています。すなわち、セロトニンは培養細胞系において増殖因子として働き、神経突起伸展を抑制することが知られております。妊娠期ラットにセロトニン作動薬を投与すると、その母体から産まれた新生児においてセロトニン神経軸索の異常な成長を引き起こすことも知られています。一方、妊娠期に与えられた各種ストレスは、たとえそれらが緩和なものであっても、新生児の脳神経機能発育に対して潜在的影響を及ぼし、成長後の精神神経機能に異常をきたしている可能性が示唆されています。私たちの研究室では、このようなストレス作用と神経精神機能異常を結びつける情報伝達物質として、セロトニンおよびセロトニン神経系の役割の可能性についての検討を行っています。
(2) ラット空腸・モルモット心房標本における5-HT受容体機能の薬理学的研究

セロトニンはヒトを含む哺乳動物の心臓に対して、その機能を促進させる局所ホルモンとして作用することが明らかとなっています。この心臓作用に関与するセロトニン受容体サブタイプも明らかになり、動物種族差も存在しております。私たちの研究室においては、モルモット心臓に対してセロトニンが機能促進作用を示し、その作用は5-HT3受容体刺激およびそれに伴う活性ペプチド(CGRP)の遊離作用によって引き起こされることを明らかにしています。このような受容体機構をさらに詳細に解明することは、心不全治療薬、不整脈治療薬あるいは狭心症の予後改善薬の開発につながると考えており、一連の基礎薬理学的研究を行っています。
(3) 5-HT2A受容体アンタゴニストによる慢性疼痛緩和作用の末梢性抑制機構

末梢血液循環系において、セロトニン5-HT2A受容体拮抗作用をもつ抗血小板薬は、すでに慢性動脈閉塞症の予防・治療薬として臨床応用されています。さらに、腎臓循環系、心臓冠循環系、脳循環系における5-HT2A受容体の機能的意義を解明することは、5-HT2A受容体拮抗薬の新たな臨床応用へとつながります。例えば、急性炎症発症時に末梢循環中の血小板から遊離されるセロトニンが炎症ケミカルメディエーターの一つとして急性疼痛を引き起こすことが知られています。一方、慢性神経因性疼痛のような難治性疼痛には炎症ケミカルメディエーターの関与は考えにくく、何らかの痛覚受容系における可塑性変化が示唆されています。そして、このような神経因性疼痛に5-HT2A受容体拮抗薬が有効であったとの症例報告もなされています。私たちの研究室においては、慢性神経因性疼痛モデル動物を作成し、5-HT2A受容体拮抗薬の慢性疼痛緩和作用機構の検討を行っております。その発症機構の解明ならびに5-HT2A受容体拮抗薬の作用機構の解明により、この薬物の新たな臨床応用の可能性が明らかになるものと考えております。
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