2009.7.16 更新
海の動物の行動を<探る>
海洋動物行動学研究室
平成20年4月開設

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研究室のホームページ
こちらのページでは詳しい研究内容や日頃の調査風景などを紹介しています。



教員
 講師    渡辺 伸一
 客員教授  宮崎 信之 (東京大学海洋研究所 教授)



はじめに
 海は、地球の表面積の71%の広さがあり、深さも平均3800メートルに達します。この巨大な海洋という環境の中にはたくさんの動物が棲息していますが、実は私たちは、それらの動物についてあまりよく知ってはいません。たとえば、餌のことひとつをとっても、魚やクジラ・イルカなどの海産哺乳類がどのようにして餌をとっているのか、いつ、どこで、何を、どのくらい食べているのか、という基本的なことすらも完全にはわかっていません。なぜかというと、広い海の中に棲んでいる動物を詳しく観察することはとても難しいからです。陸上に棲息している動物が研究対象であれば、根気と体力さえあれば、私たちはその動物の行動を24時間追跡し、双眼鏡で観察し続けることも可能かもしれません。しかし、私たちは水中に長時間留まることはできませんし、早いスピードで泳ぎ去る動物を水中で追いかける手立てはありません。

 私たちは、マイクロデータロガーとよばれるハイテク装置を開発し、上記のような古典的な手法では観察が不可能であった海洋動物の行動を、この装置を使って調べています。この研究分野は、日本バイオロギング研究会(http://bre.soc.i.kyoto-u.ac.jp/bls/)のメンバーをはじめとする日本の研究者達が世界に先駆けて行ったもので、今では「バイオロギング・サイエンス」と名付けられ、その手法は世界各地の野生動物の行動研究において急速に広がりつつあります。


マイクロデータロガーとは?
 マイクロデータロガーは、小型の動物にも負荷を与えない小さな筒状の筐体の中に水深、水温、加速度などのセンサーを組み込んだ計測装置で、現在では単三乾電池ぐらいの大きさまで小型化されています。もう少し大型のものでは、水中カメラを組み込んだロガーも開発されています。これらのロガーは超小型化を達成しているだけではなく、深海でも機能する強固な防水性をもち、これまで観察が不可能だった水中深くまで潜るような海洋動物の行動研究をも可能にしました。マイクロエレクトロニクスの進歩により、装置の小型化と記録期間の延長、高精度化が進み、現在では、大型のクジラから小型の魚類にいたるまで、さまざまな海洋動物の行動研究に利用することができるようになりました。



データロガーで調べる項目

 1960年代にデータロガーがはじめて潜水動物の研究に使用されたときには、動物が遊泳した深度しか計測できませんでしたが、装置の開発が進むにつれて計測項目も多様化し、休む・泳ぐ・餌を食べる、といった動物の詳細な行動や、心拍数の変化など生理状態についても調べることが可能になっています。


マイクロデータロガーをどのように使うのか?
 データロガーを用いる研究では、データロガーを動物の体に装着して野外に放し、放している間にその動物が経験した環境要因やそのときの行動をデータロガー内のメモリに記録します。そのデータをみるためにはデータロガーを回収する必要がありますが、それは容易なことではありません。ペンギンやアホウドリといった海鳥の場合は、繁殖期間中であれば親鳥は数日間隔で必ず自分の巣にもどってきますので、その習性を利用し、動物を再捕獲してデータを回収することができます。しかし、私たちが研究しようとする海洋動物は水中で棲息しているため、ロガーを装着した動物を再捕獲することは簡単ではありません。
 近年になって、タイマーや遠隔操作でマイクロデータロガーを動物の体から切り離し、ロガーから発信される電波を頼りに探索・回収することができるようになり、マイクロデータロガーを、これまで難しかった野生の海洋動物の行動解明に利用することが可能になりました。


おわりに
 海は深く大きく、まだ私たちにも分かっていない部分が多く残っている世界です。これらの謎を解明する有力な手段のひとつが、私たちが進めようとしている「バイオロギング・サイエンス」です。私たち海洋動物行動学研究室では、東京大学海洋研究所 宮崎研究室 (http://cicplan.ori.u-tokyo.ac.jp/miyazaki/index.html)と連携し、同研究室で開発されたマイクロデータロガーを活用して瀬戸内海の内湾環境に生息している魚類やイルカ類などさまざまな海洋動物の行動・生態を調べたいと考えています。そして、それらの生物と環境要因との関わりや生物間の相互関係を明らかにすることによって海の謎の一端を解きあかし、さらにはヒトと海との共生の道について考えていきたいと思っています。

皆さんも、私たちと一緒にフィールドに出て、海洋動物の行動を調査研究してみませんか?


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