中四国をリードする大型構造物耐震実験施設
構造・材料開発研究センター


研究組織スタッフと研究概要

研究課題 1 高延性・耐熱機能材料の創成と評価

1.1 平成19年度研究成果概要(井上、中東)

(1)研究成果A 耐震性高延性材料(耐震性新鋼材)の開発

 土木建築構造物の耐震性を向上させる方法が数多く考案されているが、その中の一つに構造物の中に軟質部(デバイス)を組み込み、構造物の損傷をそこに限定させようとする方法がある。これに応える低耐力・高延性新材料として、本研究室ではオーステナイト系16Ni-14Cr鋼(0.2%耐力:100MPa、引張強さ:448MPa、伸び:75%)を開発してきた。本研究では、耐震設計の自由度増加を目的に、0.2%耐力:100MPa程度、伸び:30%以上で、引張強さを200~500MPaとする多種類の耐震用新鋼材の開発に着手することにした。なお、本年度は引張強さ500MPa程度を目標に成分系の探索を行った。(研究T)

 また、コンクリート構造物の耐震性向上のために、鉄筋コンクリート部材に用いられる鉄筋材の中でもX型主筋用の新鋼材の開発に着手することにした。開発目標値は、0.2%耐力:100~150MPa、引張強さ:400MPa程度、伸び:30%程度で、伸びが20%付近で引張強さを示す鋼材の開発に着手することにした。(研究U)

【研究T「多種類の耐震性新鋼材の開発」】

 16Ni-14Cr鋼に加工誘起マルテンサイト変態を助長するSiを1〜5wt.%添加した鋳造材、熱延材(16-14-Si鋼)を準備し、これよりJIS 14B号引張試験片を切り出して引張試験を行った。また、引張試験後の組織を光学顕微鏡で観察した。その結果、16-14-Si鋳造材は、いずれも0.2%耐力:100MPa程度、伸び50%程度を示し、引張強さも16Ni-14Cr鋼より上昇する傾向が確認され、特に16-14-5Si鋼については著しく引張強さは向上した。

 熱延材では、16-14-1Si鋼及び16-14-3Si鋼は16-14鋼と比較して、0.2%耐力はほぼ等しい値を示し、引張強さ450MPa程度、70%を超える伸びを示した。16-14-5Si鋼については伸び90%を超える値を示したが、0.2%耐力が上昇した。 

【研究U「X型主筋用新鋼材の開発」】

 供試材は、16-14鋼をベースとして、Ni量を減少させ、加工硬化を著しく増大させる働きを有するMnを添加した鋳造材、熱延材を準備し、これよりJIS 14B号引張試験片を切り出し、引張試験を行った。その結果、今回準備した材料の中では、4Ni-14Cr-24Mn鋼熱延材が0.2%耐力:118MPa、引張強さ:448MPa、伸び:28%を示し、さらに伸びが20%付近で最大応力を示すなど、開発目標値に最も近い値を示した。

(2)研究成果B耐震性鋼材の高温強度特性と耐火性能の評価

 巨大な都市型地震が発生すると,鉄骨構造物などには大きな応力が生じる.さらに多くの場合大火災が発生することがあるが,火災によって構造物の温度は800℃を超えるといわれている.また,消火活動による温度降下によって,材料が著しい温度変化をうけ,そのために材料には相変態による組織変化をおこすことがある. 

 本研究では,まず耐火鋼NSFR490Aの中実試験片を用いて一定温度における高温引張試験を行い,室温から800℃までの耐火鋼の高温特性についてのデータを収集した.実験によって得られた応力−ひずみ線図のうち,ひずみが4%までをRamberg-Osgood lawで近似し,材料パラメーターを温度の関数として表現する.

 つぎに,筆者の一人が提唱した統合型変態・熱塑性構成式理論を適用して,温度と応力が種々の経路で負荷される場合の弾塑性応答をシミュレートする.この解析結果と,中空円筒試験片を加熱・冷却することによって得られる同様の経路に対する実験結果験を比較検討した.

得られた応力―ひずみ線図を,Ramberg-Osgood型の式

で近似した.式中のパラメーターは,応力;MPa,ひずみ:無次元,温度:℃として,以下のとおりである.

 ,  ,

以上の引張試験による応力―ひずみ関係式を用いて,温度と種々の負荷経路に対する応答のシミュレーションを行う.これの妥当性を検討するために,薄肉中空試験片を,引張試験と同様に高周波加熱を行い,中空内部に圧縮空気を導入して冷却した.

相変態が起きない比較的低温の場合も含めて,次のような温度,負荷の経路についての解析を行った.

●Path-1:温度= 800℃で,約1%まで引張り後,応力を保持したまま,冷却する経路:800℃において,約1%まで引張ると,応力は80MPaとなるが,ここで応力を保持したまま,冷却すると,高温度での応力―ひずみ線図より応力は下側になるので,当然弾性ひずみが減少する

●Path-2:温度= 800℃で,約1%まで引張り後,応力速度2MPa/sで負荷しつつ冷却する経路;Path-1と同じく1%程度負荷した後,応力を増加すると,はじめは弾性的な応答をするが,同時に温度が低下するため,

応力―ひずみ線図は下側に移動し,およそ90MPaからは塑性変形をする.

●Path-3:室温で約2%(このときの応力=400MPa)まで引張り後,応力を= 2MPa/sで負荷しつつ,= 4℃/sで900℃まで加熱する経路:室温で引張りを行った後,応力を減少させながら,温度を上昇させる場合の温度,応力とひずみの時間変化は、シミュレーションと結果は実験良好な一致をした.

●Path-4:その後,応力を= 1MPa/s で負荷しながら,冷却する経路:時刻70sのあたりで弾性から塑性に遷移する.このとき、熱塑性ひずみとともに、変態ひずみ、変態塑性ひずみを考慮する場合としない場合のシミュレーションを行ったところ、実験的な挙動は、これらをすべて、考慮しなければ妥当な結果が与えられないことが明らかになった。

以上のことから、地震とその後の火災と鎮火に際して,鋼構造物が受ける応答をシミュレートするためには,提案した変態塑性特性を 含む統合型変態・熱塑性構成式の有用性が明らかになった.

(3)研究成果C βrich-α+β型チタン合金への水素処理の適用

 金属材料の高性能化、あるいは新機能創出の手段として結晶粒の微細化が挙げられ、その方法の一つに水素処理法がある。いわゆる水素の吸蔵−溶体化・マルテンサイト(α')化−熱間圧延−脱水素処理である。実際にこの処理によってα(HCP)+β(BCC)2相型Ti-6Al-4V合金のα粒径は約0.5μmの等軸超微細組織となり、耐力は格段に向上することがこれまでの研究でわかっている。チタン合金は常温における組織の形態によってα型、α+β型、βrichα+β型、nearβ型、β型チタン合金等に分類されるが、これらの合金すべてに水素処理法を適用できるか否かはまだわかっていない。そこで本研究では、この水素処理の適用範囲を把握することを目的として、βrichα+β型チタン合金に本処理の適用を試みた。供試材として、βrich-α+β2相型Ti-4.5Al-3V-2Mo-2Fe合金を用い、本合金に実際に水素処理を施して適用可能性を調べた。その結果、水素吸蔵前の結晶粒径は約3μmであったが、水素吸蔵量:0.5wt.%、溶体化・マルテンサイト化温度:1178K,圧延温度:828K、圧下率:80%以上、脱水素温度:873Kで処理することにより、α粒径0.1~0.3μmの超微細組織になることがわかった。微細化については、これまで行ってきたTi-Al-V系合金と同様、溶体化・α’化処理によって生じるマルテンサイト、特にその形状が微細化に寄与していると考えられる。


研究課題 2 耐震性新構造システムの開発

2.1平成19年度研究成果概要

研究成果A 鋼構造物の耐震性能向上について(上野谷実、中村雅樹)

 鋼構造物の耐震性能向上に適用するせん断型塑性リンク部材の効果的な断面構成について検討した。普通鋼SM490、低降伏点鋼LY100および耐震用新鋼材 FLS100を用いたせん断型塑性リンク部材について繰返し載荷実験を行い、強度、塑性変形性能およびエネルギー吸収性能を明らかにした。

 門形ラーメン鋼製橋脚の曲げモーメントおよびせん断力が卓越する柱基部において、せん断塑性リンクの適用性について検討した。一定の軸方向圧縮力のもとに、水平力による交番曲げモーメントおよびせん断力を受けるハイブリット型箱形断面片持柱の載荷実験を行った。これまでの研究結果より、ハイブリット型箱形断面部材の場合、フランジに普通鋼SM490を用いて、フランジパネルが全体座屈を生じるようにフランジのリブ数を増加し、ウェブに低降伏点鋼LY100およびFLS100を用いて、フランジ板厚をウェブ板厚の2.6〜3.6倍の厚さとした。曲げモーメントがせん断力より卓越する柱基部では、ウェブ板厚に対するフランジ板厚の比が大きいほど、塑性変形性能が大きくなり、本実験の場合、塑性変形性能は標準断面柱の倍以上に達して、耐震性能は著しく向上することが明らかになった。また、フランジ板厚がウェブ板厚よりかなり厚い場合、すなわち、ウェブの相対的剛性がかなり小さい場合において、せん断力が卓越する部分におけるせん断塑性リンクの挙動と異なり、せん断変形によるエネルギー吸収は少なく、曲げによるエネルギー吸収が著しく大きいことも明らかになった。

 門形ラーメン鋼製橋脚の柱基部と隅角部の中間部のようにせん断力が卓越する部分におけるせん断塑性リンク部材の断面構成を検討した。一定の軸方向圧縮力のもとに、水平力による交番せん断力を受けるハイブリット型箱形断面部材の載荷実験を行った。これまでの研究結果より、せん断塑性リンク部材においてのフランジはすべて普通鋼SMとし、ウェブは普通鋼SM、耐震用新鋼材FLSおよび低降伏点鋼LYの3鋼種とし、ウェブの板厚はフランジの1/2の厚さとした。曲げ剛性の低下を補うために通常の2.5倍の補剛材(SMの縦リブ)を配置した。その結果、ウェブにFLSを用いた場合、SMを用いた供試体より低い荷重で塑性変形を生じるが、ひずみ硬化により終局強度はSMを用いた供試体より高くなる。塑性変形性能およびエネルギー吸収性能はSMを用いた供試体より優れている。ただし、溶接部の亀裂破壊により崩壊しており、FLSの溶接性の向上が今後の課題である。また、ウェブにLYを用いた場合と比較すると、FLS を用いた供試体は強度が高く、塑性変形性能およびエネルギー吸収性能はほぼ同等である。従って、せん断リンクデバイスへの適用性はFLSおよびLYがSMより優れており、特に強度が必要な場合にはFLSが優れていることが確認された。

 研究成果B コンクリート構造の耐震性向上に関して(南 宏一、寺井雅和)

コンクリート構造をコンクリート系構造としてとらえて、通常の鉄筋コンクリート構造と鋼とコンクリートによる合成構造・混合構造も研究対象にして研究活動を推進している。

1)地震エネルギーを効果的に吸収させる耐震性新鋼材を開発してきた。本研究では,この耐震性新鋼材による棒鋼を平行主筋あるいはX形主筋として組み込んだ鉄筋コンクリートの曲げ部材の実験を行い,その耐震性能の検討を行った。その結果,耐震性新鋼材を主筋に用いると,普通鋼材を用いた場合に比して,変位振幅の増加にともなって等価粘性減衰定数が大きくなり,耐震性能の向上に寄与することを示した。

2)SRC柱の主筋を除き,耐震性,施工性および経済性を向上させ建設コスト面を考慮した構造として,SRC柱とCFT柱の特性を考慮した新しい形式の鉄骨コンクリート(SC)柱を提案する。提案する柱の形状は,鉄骨を内蔵し,かつ,柱頭・柱脚部のみに鉄骨箱形部材を被覆したものある。本論では,提案する背景,実験計画,実験結果について述べ,耐力および靭性の評価について実験的,理論的な検討を行った。

3)中四国地域の既存RC 造学校建築物の耐震診断により,13.5MPa未満の低強度コンクリートの建築物が多く存在することが分かったが,その低強度コンクリートのRC部材の耐震性能に関する研究例は少ない。本研究では,低強度コンクリートの調合設計を確立し,5MPa級の低強度コンクリートを用いたRC柱の実験を行った。その結果,主筋が丸鋼のため,低強度コンクリートであってもせん断破壊が生じにくく,著しい逆S字形の履歴特性を示すものの,靭性指標Fが3程度までの大きな変形能力が確保されることが示された。

4)従来の鋼材に比べ,変形性能に優れた高強度低降伏比の鋼材と高強度コンクリートの高強度材料とを組み合せたSRC柱の実験を計画し,終局耐力と変形性能について検討した。曲げ及びせん断の終局耐力の実験値は日本建築学会のSRC規準に準拠した一般化累加強度理論による計算値に対し1.22〜1.47の安全率を示し,かつ,せん断破壊が生じた場合においても,安定した紡錘形の履歴性状を示すことが認められた。さらに,高強度コンクリートを用いた場合の終局せん断耐力の計算値は塑性理論によって,より実験値に一致する値が得られることを示した。

5)S部分をリング金物で補強したSRC有孔梁の終局せん断耐力や変形性能を把握する目的で,梁端部近傍に貫通孔を有するSRC 有孔梁の実験を行った。その結果,SRC有孔梁の終局せん断耐力は孔径や補強方法に関わらずS部分とRC部分の累加強度により安全側に推測できるが,孔径が梁せいの0.4倍のSRC 有孔梁(SRC規準上限値)では,小さな孔径のSRC有孔梁よりも梁降伏後の変形性能やエネルギー吸収能力が著しく劣ることが判明した。

 研究成果C 木質構造の耐震性向上に関して(鎌田輝男)

(A)リブフレームを用いた木造剛接フレーム(ラーメン)の開発

 木材資源の有効利用を目指して開発された木造リブフレームユニットを桁で連結することによって木造剛接フレームを構成し、いわゆる木造ラーメン架構を構成することができる。さらにこれを平面的にあるいは立体的に連結することによって、いわゆるモノコック構法構造物の実現が可能であり、本構法を住宅あるいは中規模構造物に応用した場合、施工の簡略化によって建設工期の大幅な短縮を図ることができ、その経済効果は極めて大きいものとなる。そこで、本構法の基本となる木造剛接フレームの耐力特性を明らかにするために、2個の実大サイズリブフレームユニットを2700oの桁で繋ぎ、柱間を4500oとする3体のフレーム方向試験体の水平耐力特性実験を実施した。いずれの試験体でも、柱変形角1/30において最大耐力約25kNを確認することができた。一方、フレームに直交する方向、いわゆる、壁方向には水平抵抗要素を持たないので、リブフレーム間に耐力パネルを設けるか、あるいは、筋違いによってせん断抵抗性を付与する必要がある。そこで壁方向には4面のリブフレームを想定し、フレーム間3面に耐力パネルを設けたもの、中央1面のみに耐力パネルを設けたもの、9o鉄筋をたすきがけ筋違いとしたものの3タイプの試験体の水平耐力実験を実施した。壁方向試験体では、変形角の増加とともに、耐力パネル取り付け部が損傷するために、1面の場合では1/20の変形角で大きく破損し、耐力を喪失したが、3面(全面)パネルの場合は、耐力はパネル面数に比例して増大するだけでなく、1/40の変形にも耐えることができた。筋違いを持つ試験体では、1/60の変形角で最大耐力に達するが、それ以上の変形に対しても耐力低下を来すことなく、1/20の変形角に対しても筋違いは破断することなく、抵抗要素としての機能を果たした。

 木造リブフレームの製作には特殊な技術や設備を必要とせず、プレファブ化によって容易に供給することができ、建設コストを抑え、かつ、耐震性能に優れた住宅あるいは中規模構造物の構法として極めて有効である。

 


研究課題 3 既存構造物の耐震補強技術の開発

2.2平成19年度研究成果概要

研究成果A 建築構造物の耐震補強技術について(南 宏一、寺井雅和)

 四国耐震診断評定委員会・愛媛耐震研究会によって作成された「低強度コンクリートの既存鉄筋コンクリート造建物の耐震改修において考慮すべき基本方針(案)」に基づいて、平成18年度に耐震改修設計が行われた愛媛県立高等学校の低強度コンクリートの既存RC造校舎の鉄骨ブレース後施工アンカー工法による補強骨組みの耐震改修設計内容の妥当性を検証する。この実験は、日本コンクリート工学協会中国支部に設けられた低強度コンクリート特別研究委員会の実験担当者で構成されるWGによって実施された。正負繰り返し荷重に対して原点対称となる履歴を示し、試験体の製作や加力方法が適切であったと考えられる。実験結果より、F1試験体の耐力は計算耐力を上回り、F値は1.5を確保できることが確認された。また、F2試験体の耐力はF1試験体の4倍程度となり、低強度コンクリートの建物に対しても、あと施工アンカー工法による鉄骨ブレース補強が有効であり、かつ、F値はF1試験体と同様に1.5を確保できることが確認された。
  あと施工アンカー工法による鉄骨ブレース補強骨組みのF値は1.27であり、本実験におるF値は1.5であることから、設計内容は妥当であると判断される。
  また、今回の実験では、鉄骨ブレース補強骨組の柱の軸崩壊を回避するため、柱に芯鉄筋(SD295)を配筋しているが、1/100程度の変形において付着割裂破壊を生じた。柱主筋に異形鉄筋を用いている場合には、さらに小さい変形で付着割裂破壊を生じることが考えられ注意が必要である。補強建物が学校校舎であり、振動や騒音などの問題や、あと施工アンカーが施工できない場合も想定され、別の工法の実験を合わせて行うことが必要である。そこで、これらの問題が軽減される代表的な工法である鉄骨ブレース接着工法について実験を行った。
  低強度建物に鉄骨ブレース補強を行う場合、次のような注意が必要であることがわかった。
1)あと施工工法、接着工法とも、接合部の強度を十分確保することが困難な場合が多いので、鉄骨ブレース材の断面は通常の1サイズ程度小さな断面とするのが望ましい。
2)ブレース材はSN400材を用いることが望ましいが、SS400材を用いる場合は引張試験を行うなど、降伏強度に注意し、降伏強度が高い材は用いないことが望ましい。

研究成果B 土木構造物の耐震補強技術について(宮内克之)

 ポリマーセメントモルタルの乾式吹付け工法を利用した方法による,既存鉄筋コンクリート構造物の曲げ耐力向上型耐震補強効果について,断面寸法600×600 mmの柱試験体を用いて検討した。その結果,提案工法で補強することによって,所要の曲げ耐力の向上を図ることができるとともに,十分な耐震性を付与できることが確認された。

 研究成果C 木質構造の耐震補強技術について(鎌田輝男)

(A)木造床版のせん断変形に対する耐力特性

 木造住宅に限らず,建築物の床面は剛強なものと想定され,いわゆる剛床仮定に基づいて建築物の地震力による変形や応力状態が評価される.しかし,貫やほぞによる木造仕口では剛床版を構成することは一般に困難であり,木造住宅において床版の剛性が地震応答特性にどのような影響を及ぼすかという問題には不明な点が多い.昨年度は、E-Defenseにおける伝統木造住宅の振動実験に対応して,伝統構法木造住宅の床版を想定し、6畳間に相当する4P×3Pサイズの床版の静的加力実験によって面内せん断変形に対する仕様別床版の耐力および復元力特性を明らかにした.

 本年度は、柱の仕口をほぞ入れ箱穴引き寄せとし火打ち金物で補強し、また、桁とこばりは大入れ蟻懸け羽子板ボルトによって緊結した、いわゆる、在来工法木造床版の面内せん断変形に対する耐力実験を実施した。なお、床板として、厚さ12oおよび24o構造用合板を使用したものと厚さ30o杉板を用いたものを使用した。床版の耐力特性に関する実験例は極めて少なく,また,床版の耐力実験といっても,通常,床版を立てた状態で加力されるので,本センターで実施したように,床版を本来の状態である水平状態に設置して加力実験を実施したことは国内において初めてのことであり,貴重なデータを収集することができた.