中四国をリードする大型構造物耐震実験施設
構造・材料開発研究センター


研究組織スタッフと研究概要

研究課題 1 高延性・耐熱機能材料の創成と評価

1.1 研究成果概要

(1)研究成果A 耐震性高延性材料(耐震性新鋼材)の開発(中東 潤)

土木建築構造物の耐震性を向上させる方法の一つに、構造物の中に軟質部(デバイス)を組み込み、構造物の損傷をここに限定させようとする方法がある。これに応える低耐力・高延性新材料として、本研究室ではオーステナイト系16Ni-14Cr鋼 (以下16-14鋼)を開発し、さらに昨年度は大型溶解製造条件を確立することに成功している。現在では大型溶解で試作した16-14鋼を実際にデバイスとして柱に組み込み、中規模試験を実施しているが、その中でいくつか問題が生じてきている。それは、(1)木造建築物への適用が困難、(2)溶接部での破断である。(1)については16-14鋼の板厚が3oと厚いために強度が高く、結果として主要構造材である木材が先に破壊するというものである。(2)については、主要構造材である溶接構造用圧延鋼材(SM400)と16-14鋼を溶接で接合してせん断試験を実施した際、溶接部で破断が確認されたことである。そこで本研究では、まず(1)については板厚3oから更に薄い板を冷間圧延−焼鈍にて作製することにした(応用研究T)(2)については、SM400と16-14鋼を実際にTIG溶接(溶接材:SUS309L)にて溶接し、継手部の引張及び衝撃試験を行った(応用研究U)。さらに、耐震設計の自由度増加を目的に、0.2%耐力100MPa程度、伸びが30%以上で、引張強さが200~500MPaとする多種類の耐震用新鋼材の開発にも着手することにした。供試材にはシェフラーの状態図を参考にγ相とγ+α’相との境界線近くに沿ってNi、Crの含有量を変化させた成分系の鋳造材と、オーステナイト相を安定させ引張強さを低下させる目的で16-14鋼にCuを添加した鋳造材及び熱延材を準備し、これらの各材料について引張試験を実施した。なお、本年度は引張強さ300MPa程度を目標に成分系の探索を行った(探索研究)。実験結果は下記の通りである。

【応用研究T「16-14鋼薄板の試作」】

圧延に伴う組織の変化及び割れの有無を調べた結果、結晶粒は変形していたが、割れは確認されなかった。引張試験結果から、薄板の耐力は高くなり、伸びは多少低くなるが、依然として高延性(50%以上)を保つことがわかった。学外にて作製した薄板においても、金属組織に割れ等は見られなかった。引張特性を見るとL方向(圧延方向に対して平行)、C方向(圧延方向に対して垂直)共にほぼ同じ値を示し、異方性はほとんど無いことがわかった。

【応用研究U「溶接継手部の力学的性質」】

引張試験の結果では、試験片の溶接部での破断見られなかった。衝撃試験においては、−20℃及び−50℃のいずれの試験温度においても極端に低い吸収エネルギを示す箇所は無かった。よって、適切な溶接条件を与えれば、溶接部に問題は生じないと考えられる。

【探索研究「多種類の耐震性新鋼材の開発」】

引張試験の結果、Fe-24Ni-7Cr鋳造材が0.2%耐力78MPa、引張強さ305MPa、伸び49%を示した。16-14鋼の引張強さを低下させるため、Cuを添加してみたが、鋳造材、熱延材ともに引張強さはあまり低下しなかった。

(2)研究成果B耐震性鋼材の高温強度特性と耐火性能の評価(井上達雄)

巨大な都市型地震が発生すると,多くの場合大火災が発生する.火災によって,構造物の温度は800℃以上に達するといわれている.このような温度変化を受ける場合,必然的に変態点を通過するから,構造物や材料の力学的挙動は複雑になる.

ここでは,先に提唱した変態塑性ひずみを規定することを目的とした統合型変態・熱塑性理論を適用して,温度および応力が複雑に変化する場合の挙動に関して,熱応力,変態応力を含めたシミュレーションを行い,耐火鋼FR490Aを対象として実験結果との対応を試みた.

用いた一般的な構成式は,塑性ひずみ速度が

で規定されるものである。降伏関数として

と表わされるMisesの降伏条件に従う等方硬化材料を考えと、結局以下のようになる.

すなわち、右辺第1項は通常の塑性ひずみであり、第2項は変態塑性ひずみとなることがわかる。

とくに、単軸応力下でのひずみ速度は以下のとおりである.

対象とした材料は,耐火鋼FR-490Aであって,直径10mmの中実試験片を用いた各温度における応力―ひずみ線図を実験的に決定し、これを

と近似した。これを用いて、地震による室温での負荷、その後の火災の発生による温度上昇、さらには消火による冷却を模擬した負荷と温度変化に対する以下のシミュレーションを行った。

Path-1:室温でσ=400MPaまで引張(このときのひずみはε=1.7%).

Path-2:その後,応力速度 で徐荷しながら,=1K/sで加熱する。

Path-3:900℃から冷却しながら、で負荷する.

シミュレーションの結果は、外形19mm、肉厚1.5mmの中空試験片を用いた実験結果と極めて良好な対応をすることが明らかになった。

(3)研究成果C 水素処理によるα+β2相型チタン合金の結晶粒微細化とその応用

金属材料の高性能化、あるいは新機能を創出する手段として結晶粒の微細化が挙げられ、その方法の一つに水素処理法(水素吸蔵−溶体化・マルテンサイト化(α’)−熱間圧延−脱水素)がある。この処理によってα(稠密六方晶)+β(体心立方晶)2相型Ti-3Al-2.5V合金(以下、3-2.5材と記す)の結晶粒径は0.5~1μmとなり、極めて優れた超塑性を示すことがこれまでの研究でわかっている。そこで本研究では、この3-2.5材のさらなる微細化を目指すため、熱間圧延に代わる加工法として、材料に強ひずみを付与することができるECAP法(Equal Channel Angular Press)を水素処理工程の中に導入し、微細粒化の可能性を探索した(探索研究)。また、これまでに得られている微細粒3-2.5材の優れた超塑性を活かし、歯科補綴物の一つである義歯メタルフレームの試作を超塑性加工にて行った。水素処理によって微細化した3-2.5材から加工用薄板(直径40o×厚さ0.75o)を切り出し、所定の温度に加熱後、アルゴンガスで加圧し、保持する。このときの最適加工条件(圧力及び保持時間)を探索した。また、試作品の断面板厚の測定、断面組織の観察を光学顕微鏡にて行った(応用研究)。    

得られた結果は下記の通りである。

【探索研究:ECAP法を導入した水素処理によるTi-3Al-2.5V合金の結晶粒微細化】

ECAP工程におけるパス回数:1パスでは多くの針状組織が残留しているが、パス回数を増加させるにつれて針状組織は少なくなる。そして8パス行うことにより針状組織はなくなり、均一な等軸微細粒組織となることがわかった。SEMで観察した結果、結晶粒径は従来の圧延法を用いた水素処理材と比較して、小さくなる傾向を確認した。この理由として、針状α’組織がECAPにて微細粉砕されたことが一因として考えられる。

【応用研究:微細粒Ti-3Al-2.5V合金の義歯メタルフレームへの応用】

加工後の板厚に及ぼす圧力の影響について調べた結果、圧力を上昇させると共に、外見上ではあるが精度は向上し、2.1MPaではカットラインが明瞭に現れた。しかし、更に圧力を上げ、2.4MPaとすると、側面での破断が確認された。試作したメタルフレームの板厚を光学顕微鏡で測定した結果、圧力1.5及び1.8MPaでは極端に薄くなっている部分が確認されたが、2.1MPaでは比較的均一な板厚となっていた。このことより、最適な加工圧力は2.1MPaである。保持時間については長くすることで、外見上ではあるが加工精度が向上する。しかし、14.4ksを超えてからは、精度の変化は見られなかった。よって最適な保持時間は14.4ksである。光学顕微鏡にて試作したメタルフレームの断面組織を観察したところ、いずれの観察場所においても結晶粒はやや粗大化しているものの、加工前の等軸組織を維持している。また、割れやボイドも観察されず、健全な組織であることがわかった。

 


研究課題 2 耐震性新構造システムの開発

2.1研究成果概要

研究成果A耐震性新構造システムの開発(上野谷実、中村雅樹)

 鋼構造物の耐震性能向上に適用するせん断型塑性リンク部材の効果的な断面構成について検討した。普通鋼SM400、低降伏点鋼LY100および耐震用新鋼材 FLS100を用いたせん断型塑性リンク部材について繰返しせん断載荷実験を行い、強度、塑性変形性能およびエネルギー吸収性能を明らかにした。また、橋梁に作用する地震エネルギーを吸収する機能分離型支承を開発するために、上部工と下部工の接点である支承部分に配置するせん断パネル型ダンパーの鋼材および断面形状に関する繰り返しせん断特性を検討した。

1)門形ラーメン鋼製橋脚の曲げモーメントおよびせん断力が卓越する柱基部において、せん断塑性リンクの適用性について検討した。これまでの研究結果より、ハイブリット型箱形断面部材の耐震性能はフランジに普通鋼SM400を用いて、フランジのリブ数を増やしてフランジパネルが全体座屈を生じるようし、ウェブに低降伏点鋼LY100およびFLS100を用いて、ウェブの板厚をフランジより薄くすることにより向上することが明らかになった。しかし、鋼製橋脚において、地震力の方向が90度変われば、ウェブは曲げを受けるフランジとして抵抗する必要がある。ところが、低降伏点鋼の薄いウェブがフランジとして抵抗する場合は剛性不足となる。このような曲げ剛性の低下を補うために、ウェブに普通鋼SMを使用し、ウェブより薄いフランジに低降伏点鋼LYを使用し、かつ、通常の2.5倍の補剛材(SMの縦リブ)を配置したハイブリット型箱形断面柱について、一定の軸方向圧縮力のもとに繰返し曲げ載荷実験を行った。その結果、低降伏点鋼をウェブに用いることによる曲げ剛性の低下は補剛材の増加により対処できることが明らかになった。

2)門形ラーメン鋼製橋脚の柱基部と隅角部の中間部のようにせん断力が卓越する部分におけるせん断塑性リンク部材の断面構成を検討した。一定の軸方向圧縮力のもとに、水平力による交番せん断力を受けるハイブリット型箱形断面部材の載荷実験を行った。これまでの研究結果より、せん断塑性リンク部材においてのフランジはすべて普通鋼SMとし、ウェブは普通鋼SM、耐震用新鋼材FLSおよび低降伏点鋼LYの3鋼種とし、ウェブの板厚はフランジの1/2の厚さとした。曲げ剛性の低下を補うために通常の2.5倍の補剛材(SMの縦リブ)を配置した。その結果、ウェブにFLSを用いた場合、SMを用いた供試体より低い荷重で塑性変形を生じるが、ひずみ硬化により終局強度はSMを用いた供試体より高くなる。塑性変形性能およびエネルギー吸収性能はSMを用いた供試体より優れている。ただし、溶接部の亀裂破壊により崩壊しており、FLSの溶接性の向上が今後の課題である。また、ウェブにLYを用いた場合と比較すると、FLS を用いた供試体は強度が高く、塑性変形性能およびエネルギー吸収性能はほぼ同等である。従って、せん断リンクデバイスへの適用性はFLSおよびLYがSMより優れており、特に強度が必要な場合にはFLSが優れていることが確認された。

3)橋梁に作用する地震エネルギーを吸収する機能分離型支承のせん断パネル型ダンパーに使用する鋼材および断面形状に関する繰り返しせん断特性について実験的研究を行った。普通鋼SM、耐震用新鋼材FLSおよび低降伏点鋼LYの鋼板について単調および繰り返しせん断試験を行い、I形断面パネルおよび矩形断面パネルについて強度、塑性変形性能およびエネルギー吸収性能を検討した。その結果、以下のことが明らかになった。繰り返しせん断載荷の場合、強度、塑性変形性能およびエネルギー吸収性能はI形断面パネルが矩形断面パネルより座屈による面外たわみが小さく抑えられてクラックの発生が遅れるためにかなり優れている。また、鋼種について、せん断強度はFLS、SM、 LYの順に大きく、塑性変形性能はLYが優れており、FLSとSMは同等である。また、エネルギー吸収性能はFLSが優れているが、累積エネルギー吸収性能はLYが優れている。

研究成果B 新鋼材を使用した制振ブレースの開発(中山昭夫)

 ここで扱う制振ブレースは低降伏の新鋼材15Ni-15Crを使用し、これをブレース材として地震のエネルギーを吸収するとともに、この鋼材の特徴である比較的高強度であるという性質を利用して、制振装置のみならず強度型のブレースとしての働きも期待しようとするシステムである。この新鋼材は降伏点強度が100N/mm2とLY100なみに低いが、引張強度は450 N/mm2程度あり、また破断時の伸びも約80%と大きな変形能力を示す。この鋼材をブレース材に組み込むことにより、レベル1程度の頻度の高い地震に対しては早めに降伏してエネルギーを吸収する制振ダンパーとしての役割を果たし、レベル2のめったに来ない大地震時には強度形のブレースとしての役割を果たす制震システムを開発するのが本研究の目的であり、このようなブレース材はまだ実用化されていないため、最新デバイスとしての働きを期待できるブレース材であり、実用性も高いものと考えられる。

 試験体は矩形の4点ピン鋼製フレームに組み込んだZ形ブレースが載荷実験の試験体であり、中央部に新鋼材の試験体が組み込まれ、中央部の試験体はブレース材とハイテンションボルトで接合されている。比較のためにSS400を試験体とした実験もあわせて行った。さらに、近年問題とされる堆積層の厚い都市近郊部での地震時には長周期成分の卓越する地震波の発生の可能性も指摘されているが、このような比較的長周期の地震入力が長時間続いた場合の対応も考える必要があり、周期が3〜4秒と通常の地震波より長い地震波が10分程度というかなりの長い時間入射して、1/100程度の層間変形角を生じさせるというペシマムコンディションとも考えられる条件で実験を行った。このような実験の結果、制振デバイスとしての効果は非常に優れていることが実証された、長周期での載荷においても何ら問題は生じないこと確認されたが、大変形域での耐力の向上に若干の問題点、すなわち、適切な溶材が開発されていないため、溶接部の強度が若干弱く、ここに亀裂が先行して耐力が上がらないという問題が残され、今後の研究課題として解決していく必要がある。このような条件で性能が保証されれば、長周期成分が卓越する大地震時でも十分な耐力を保有していると考えられる。

研究成果B コンクリート構造の耐震性向上に関して(南 宏一、寺井雅和)

 コンクリート構造をコンクリート系構造としてとらえて、通常の鉄筋コンクリート構造と鋼とコンクリートによる合成構造・混合構造も研究対象にして研究活動を推進している。

1)一般鋼材とは異なる材料特性を有する鋼材を主筋として用いた場合,RC部材がどのような性状を示すのか検証するために,部材断面150mm×200mmの小型試験体のより基礎的なRC部材の曲げ変形性能載荷実験を実施してきた。今年度は,これまでの研究に引き続きより実構造物に近い中型試験体(断面寸法300×300mm)で実施した。実験結果の評価では,曲げ耐力,荷重変形曲線の包絡線の比較,等価粘性減衰によるエネルギー吸収の評価を行った。その検討の結果,次のことがわかった。

  • X形配筋部材の骨格曲線はFLSとSD鋼を主筋を用いた場合の大きな違いは見られない。
  • 平行配筋部材で軸力を導入した試験体では包絡線に大きな違いは見られないが,軸力零でFLSを主筋に用いた試験体では緩やかに耐力が上昇していく。
  • 平行配筋部材でFLSを梁材および柱材に使用した場合,等価粘性減衰はどちらも大きく推移している。

2)SRC構造とCFT構造の特性を活かして,RC構造に対抗できる構造特性と構造コストを有した,鉄骨を内蔵し,かつ,柱頭・柱脚のみに鋼管を被覆した,鉄骨コンクリート構造を開発している。今年度は,従来の十字形鉄骨に対して,その主軸を45度回転させて従来の十字形鉄骨断面と比べて,ほぼ二倍の曲げ耐力を発揮できるように計画した試験体を6体制作した。この試験体では,さらに,高圧縮力に対して,両端部における変形能力を大きくするために,補強板をリング状に取り付けて,内部のコンクリートを拘束している。変動因子は,軸力比,柱頭・柱脚部の補強板の有無である。

3)既往の高力ボルト摩擦すべり接合を用いた摩擦ダンパーに対して,より大きな摩擦係数を有する摩擦すべり挙動と安定した復元力特性を発揮するダンパーの開発を行う。ここで用いるダンパーは,摩擦面に純アルミ板を挟み,通常の約二倍の摩擦力を発揮できる。このダンパーを用いた時のせん断実験を行い,常時受ける風力と非常時に受ける自信力によるエネルギー吸収,ならびに摩擦部に与える各種影響要因について検証する。

4)従来RC杭に高強度せん断補強筋は,高価であるためにほとんど使用されていなかった。今後,RC杭に高強度せん断補強筋が使用されることにより,耐力および靭性がより大きい場所打ちコンクリート杭の開発を目的とする。今年度は,せん断補強筋ピッチや軸力を変動因子として6体の試験体を制作し,実験的に検討した。

5)最近,中高層RC造建築物のせん断補強筋として高強度せん断補強筋を用いる場合が多くなってきている。また,これらの建物の梁には設備配管用の梁貫通孔を設けることが多く,開孔部周辺に開孔補強筋を配筋する必要がある。そこで,せん断破壊を生じるRC有孔梁を対象とし,1275N/mm2級の高強度鉄筋を用いた開孔補強筋の補強効果を把握することを目的とした6体の試験体を制作し,実験を行った。破壊性状および終局せん断耐力について検討し,あせて既往の有効梁の終局耐力評価式との適合性についても検討する。

6)一般的に建築物の梁には設備配管用の貫通孔を設けることが多いが,貫通孔を設けることにより梁の耐力が損なわれる。そこで,SRC梁の補強方法として,鉄骨部分にスリーブ管やリングプレートで補強し,RC部分には開孔補強筋を用いるなどの補強方法がある。ここでは,鉄骨部分の開孔補強方法として,リング補強をウエブに溶接する方法を用い,RC部分には,高強度の開孔補強筋を用いた場合について,その補強効果を実験的に検討する。

7)現在,地中梁に多く使用されている二線溶接鉄筋工法は,昭和62年に実用化したもので,実験データなどが古く実験内容も不確定な部分が多い。そこで,本研究では,二線溶接鉄筋網の継手部における力学的特性を明確にすることを目的とし,継手部のパターンを変えた10体の試験体を計画し,実験をした。

研究成果C 木質構造の耐震性向上に関して(鎌田輝男)

(A)十字型断面柱を持つ木造パネル壁軸組構法の開発

昨年度に引き続き,十字型断面柱を持つ木造パネル壁の耐力実験を実施した.本構法によって構成される軸組が耐力壁としての効果を発揮するには,壁の耐力特性を表す指標として用いられる,いわゆる,壁倍率が3以上であることが望ましい.そこで,パネル壁の種類(構造用合板あるいはOSB合板),厚さ,軸組特に横架材の樹種(スギあるいはベイマツ),パネル壁の形式(真壁式あるいは大壁式),釘サイズなどをパラメータとする4タイプの試験体を用いて,それぞれの耐力特性実験を実施し,復元力特性を得るとともに,壁倍率を算出した.いずれのタイプもパネルの孕みだしによって,軸組の崩壊を来すことになり,壁倍率3を達成することはできなかったが,パネルの孕みだしを防止することによって,壁倍率の向上が図られることが判明した.

 なお,本研究は,福山市産学共同研究事業による助成を受け,(株)蔵王工務店の協力のもとに実施されたものである.

 


研究課題 3 既存構造物の耐震補強技術の開発

3.1研究成果概要

研究成果A 建築構造物の耐震補強技術について(南 宏一、寺井雅和)

 当センターで開発した、耐震性新鋼材の実用的応用として、既存RC造建築物の耐震補強構法を開発した。補強の方法として、耐震性新鋼材をX形主筋に用いたX形配筋RC部材をRC柱に外付け補強する方法と、ウエブに耐震性新鋼材を用いたH形鋼によるせん断パネル部材をRC柱に外付けする方法の2種類を提案し、諸性状について検討した。

1)X形配筋による補強法:既存RC造建築物の柱として、旧規準で設計された部材を想定し、せん断補強筋を100mmピッチの試験体を2体製作した。軸力比なしと0.4で行ったが,軸力比によりどのような破壊性状を示すのか実験的に検討した.軸力比によりコンクリートの最大耐力やその後の変形性状に違いが見られた。今後,X形配筋部材を外付け補強した場合、どのような履歴特性になるかを検討するとともに、どのような補強方法がよいか実験的に検討をし、提案する計画である。

2)せん断パネルによる補強法:既存RC造建築物の柱として、旧規準で設計された部材を想定し、せん断補強筋を50mmピッチの試験体を2体製作した。コンクリート強度は、Fc15とした。軸力が作用する場合の方が耐力の低下が大きかった。その理由としてはコンクリートの剥落が多くみられたことから見かけの面積が小さくなり,耐力が大きく低下したと考えられる。今後パネル補強を行った試験体の実験を行い,補強しない場合との比較をする計画である。

研究成果B 土木構造物の耐震補強技術について(宮内克之)

 ポリマーセメントモルタルの乾式吹付け工法と高強度炭素繊維グリッドを併用した方法による,既存鉄筋コンクリート構造物の耐震補強効果について,断面寸法600×600 mmの柱試験体を用いて検討した。その結果,提案工法で補強することによって,2002年制定土木学会コンクリート標準示方書に基づいて設計した部材と同等以上の耐震性を付与できることが確認された。

研究成果C 木質構造の耐震性向上に関して(鎌田輝男)

(A)木造床版のせん断変形に対する耐力特性

 木造住宅に限らず,建築物の床面は剛強なものと想定され,いわゆる剛床仮定に基づいて建築物の地震力による変形や応力状態が評価される.しかし,貫やほぞによる木造仕口では剛床版を構成することは一般に困難であり,木造住宅において床版の剛性が地震応答特性にどのような影響を及ぼすかという問題には不明な点が多い.そこで,本年度E-Defenseにおける伝統木造住宅の振動実験において,床版の仕様(根太の形式,サイズ,床板の種類など)に応じて,剛床,柔床,半剛床の3タイプの床版を想定した実大伝統構法木造住宅の振動破壊実験が計画された.本センターでは,この振動破壊実験に先立ち,6畳間に相当する4P×3Pサイズの床版の静的加力実験によって面内せん断変形に対する仕様別床版の耐力および復元力特性を明らかにした.床版の耐力特性に関する実験例は極めて少なく,また,床版の耐力実験といっても,通常,床版を立てた状態で加力されるので,本センターで実施したように,床版を本来の状態である水平状態に設置して加力実験を実施したことは国内において初めてのことであり,貴重なデータを収集することができた.

(B)建具の木造軸組の耐力特性に及ぼす影響

 木造住宅において地震力に対して抵抗する耐震要素は主に壁であるとして設計され,いわゆる耐力壁をいかにして実現するかが大きな問題とされている.しかし,現実の地震被害例をみると,単に耐力壁だけでなく,二次的な間仕切り壁,垂れ壁,窓台などの鉛直面を構成する部材が地震力を負担する例が多く見られる.そこで,ふすまのような建具もそれが敷居と鴨居の間に挿入されることによって,地震力を負担することが可能ではないか,さらに,積極的に建具を耐震要素として取り入れることはできないかと考え,一間幅木造軸組にふすまや板戸のような移動式間仕切り材を取り付けた場合の耐力特性実験を行った.軸組の水平せん断変形に伴って,ふすまは自由に移動するので,初期剛性の向上には殆ど機能しないが,変形が大きくなると耐力特性の向上をみることができた.さらに変形を大きくするとふすまが破損しあるいは外れることによって,それほどの耐力向上を期待することはできなかった.