中四国をリードする大型構造物耐震実験施設
構造・材料開発研究センター


研究組織スタッフと研究概要

研究課題 1 高延性材料の開発とその評価

1.1 平成15年度 研究成果概要(吉村、井上、中東)

(1)研究成果A 耐震用高延性鉄系材料の開発・実用化研究
 本研究は、土木・建築構造物での地震時の衝撃エネルギを吸収しうる耐震性能を有する材料(デバイス材)の開発・実用化を想定して行われているものである。今年度は、開発目標特性(耐力(σ0.2):100MPa、引張強さ(σB):400MPa程度、伸び(El):30%以上)を満たす材料として、結晶構造が面心立方格子(FCC)を有するオーステナイト(γ)系の15Ni-15Cr鋼の実用化を想定した試作を行い、その母材及び溶接継手部の引張、衝撃特性を、既存の構造用鋼SM400および既存のデバイス材の極低炭素鋼L100と比較しながら調べた。
(1)15Ni-15Cr鋼の母材及び溶接継手特性
 本鋼の熱延焼鈍材の引張特性を調べた結果、σ0.2:76MPa程度(既存の低降伏点の極低炭素鋼よりも低目)、σB:421MPa(SM400並)、El:78%という優れた特性を示すことがわかった。溶接継手部の引張及び衝撃特性(シャルピー衝撃エネルギー)を調べた結果、いずれも良好な結果が得られた。とりわけ、衝撃試験においては、従来材(L100)においては、0℃においても既に脆性破壊が起こり始めているのに対し、15Ni-15Cr鋼では、低温(例えば-50℃)においても完全な延性を示し、優れた特性を示した。

 なお、本研究との関連研究についても列記する。

(2)研究成果B プロチウム(水素原子)処理チタン合金の歯科材料への適用可能性に関する研究
 上記に関連して、材料の高靱性、高延性に関する研究として、チタン合金の高延性(超塑性)に関する研究を行っている。
 結晶粒細粒化法の一つであるプロチウム処理法(水素吸蔵−マルテンサイト化−熱間圧延−脱水素)によって得られたα+β2相型超細粒Ti-6Al-4V合金(結晶粒径0.3~0.5μm)は極めて優れた超塑性特性を示す。そこで本研究では、歯科医療用部品の一つであるクラウンを超塑性加工にて試作し、歯科分野への適用可能性を探ることにした。その結果、超細粒Ti-6Al-4V合金を用いて超塑性加工を行うことによりクラウンの輪郭は明瞭に現れ、より細部まで加工が可能であることがわかった。しかし、断面組織を観察したところ、わずかながら割れやボイドが観察され、今後の課題も残された。


研究課題 2 構造物の耐震性能の向上に関する研究

2.1 平成15年度 研究成果概要(福本、上野谷、中村)

(1) 研究成果A 鋼構造の耐震性向上に関して(福本、上野谷、中村、中山)
1)門形鋼製ラーメン橋脚のダクティリティーを飛躍的に向上させる目的で、柱基部と隅角部の中間部にせん断塑性リンク部材を導入することを想定して、一定の軸方向圧縮力のもとに、水平力による交番せん断力をうけるハイブリット型箱形断面部材の載荷実験を行った。その結果、せん断リンクのウェブにLYを用いたハイブリッドデバイスの強度はSMを用いた場合より劣るが、塑性変形性能およびエネルギー吸収性能は優れている。また、最大せん断力に達した後の強度低下も緩やかであり、クラックの大きさがSMを用いた場合より小さいことなどからせん断リンクデバイスとして有利である。
このハイブリット型箱形せん断塑性リンクは大地震の水平荷重に対してのみ塑性化するように設計し、地震エネルギーを吸収して柱基部と隅角部の損傷を軽減する。すなわち、このせん断塑性リンク部材は大地震時に免震支承より著しく多くの地震エネルギーを吸収することが期待される。高価な免震ゴム支承デバイスの代替デバイスとして使用することにより、鋼製橋脚の耐震性能の向上を経済的に図ることができる。
また、鋼製門形ラーメンの柱基部や隅角部に板厚テーパー部材を配置して耐震性の向上を図る目的で解析的研究を行い、建設省土木研究所で実験された大型門型ラーメンの実験結果と比較し、塑性変形性能およびエネルギー吸収性能の向上が確認された。
2)通常の低降伏点鋼と新鋼材の低降伏点高張力鋼の2種類の鋼材を制振用のブレースに組み込んで比較実験を行った結果、両鋼種とも制振効果に優れた特性を示すことが確認された。ハイテクリーチセンターで開発された新鋼材は降伏は低降伏点鋼同様早期に起こるが、降伏した後変形が進むと強度が上昇し、強度型のブレースとして機能し、建物の最大耐力に貢献し安全性を高めることが確認された。特に大変形域では強度の上昇が顕著で、構造物の保有耐力を高める効果が期待される。

(2) 研究成果B コンクリート構造の耐震性向上に関して(南、寺井)
コンクリート構造をコンクリート系構造としてとらえて、通常の鉄筋コンクリート構造と鋼とコンクリートによる合成構造・混合構造をも研究対象にして研究活動を推進している。
1)H14年度では、福山大学ハイテク・リサーチ・センターで開発された耐震性新鋼材を主鉄筋に用いて、RC梁材の塑性ヒンジの力学的性能に関する実験および解析を行ったが、H15年度では、これらの鋼材による実験結果を比較検証するためにステンレス鋼のSUS304による鋼棒を主筋としたRC梁材・曲げ載荷実験を行った。その実験結果に対して、理論的検討を行い、鉄筋コンクリート構造部材および構造物に適用する耐震性新鋼材が適正な性能を有するための、材料強度パラメーターであるα、β、γの諸数値について、見通しを得ることができた。
2)我が国におけるRC部材の実用的なせん断設計式は、建築および土木のいずれの分野においても実験式にもとづいたものであるが、その設計式に含まれる寸法効果の影響については異なっており、算定式も異なっている。そこで、建築および土木の両分野において統一されたせん断設計法の確立にむけて、本ハイテク・リサーチ・センターで行なった実大寸法をもつ試験体の実験結果について、詳細な分析を行い、今後の研究の見通しを得た。
3)中国地域3県[広島県、岡山県、山口県]および四国地域4県[愛媛県、香川県、徳島県、高知県]にそれぞれ設置されている建築士事務所協会耐震診断評価委員会で評価された、既存RC造学校校舎の耐震診断結果に関するデータベースの構築を継続的に進めているが、これらの耐震性能の分析を行った。なお、この耐震性能の分析に関連して2001年芸予地震により被災した学校校舎の被害状況の分析もあわせて行った。
4)日本建築総合試験所の各種構造性能評価委員会で評価された、限界耐力計算法にもとづいて耐震設計が行われた29棟のRC造の集合住宅の構造設計データについてデータベースを構築し、限界耐力計算法による耐震設計の特性を分析をした。
5)兵庫県南部地震において大きな被害を受けたSRC造建築物の非埋め込み形柱脚の合理的な耐震設計法の確立を意図して、組織的かつ系統的な実験的および理論的研究を推進しているが、本年度は、圧縮および引張の変動軸力下における、曲げ・せん断に対する終局耐力および変形能力を実験的、理論的に考察し、耐震設計法への有効な基礎資料を整備した。
6)高強度で、かつ低降伏比の鋼材によるH形鋼が開発されたが、そのH形鋼のSRC構造への活用を図るために、曲げ破壊およびせん断破壊に対するSRC柱の弾塑性挙動に関する実験研究を行い、かつ、理論的な考察を加えて、高強度低降伏比の鋼材のSRC構造への適用が可能であることを示した。
7)圧縮力に対するRC柱の崩壊を防止する方法として、RC柱のコアコンクリート部分を薄肉スパイラル鋼管で補強することを提案し、このような補強効果について、組織的、系統的な実験研究を推進してきたが、本年度は、作用軸方向力が圧縮および引張の変動軸力下における曲げ・せん断実験を行い、その薄肉効果に対する補強効果が圧縮・引張の変動軸力に対して示されることを検証した。

(3) 研究成果C 木質構造の耐震性向上に関して(鎌田)
在来型軸組構法で作られた木造住宅の耐震性を向上させることは、地震防災の観点から、緊急の最重要課題である。
1)住宅の基本的な耐震要素は壁であり、様々な形式の壁の耐震性能は壁倍率と呼ばれる指標によって評価されるが、壁倍率評価基準が最近改訂され、従前の基準によるものよりも小さく評価される傾向になった。これまでの実験結果を比較検討し、壁倍率の合理的な評価法について検討した。
2)木造軸組で構成される壁の水平耐力実験では、これまで、軸組に対する積載荷重を考慮されることなく行われてきたが、新しく、積載荷重に相当する荷重載荷装置を製作し、積載荷重を受ける筋違い入り木造軸組の水平耐力特性を明らかにした。
3)木造住宅の地震応答解析を実行するには軸組の復元力特性を数式化する必要があり、これまでの実験結果に基づいて、軸組の復元力特性を包絡する骨格曲線を柱の変形角に対する関数として表現した。


研究課題 3 地盤の耐震性向上と建設発生土のリサイクルに関する研究

3.1 平成15年度研究成果概要

(1) 研究成果A 地盤の耐震性に関して(柴田、西原)
これまで数年間の研究により、上向き浸透水流によって生じる地盤の液状化においては、「限界流速」が最も重要な指標であることを明らかにしてきた。一方、流体工学の研究者たちはパイピング現象に関連して、限界流速に関する実験的・理論的アプローチを試み、限界流速を粒径の関数として表現しているが、間隙比の影響については触れていなかった。
そこで本研究では、粒状体の透水係数と粒径および間隙比に関しての数多くの実験を行ない、その結果をもとにして、これら3者の相互関係を定量的に表わすことができた。

(2) 研究成果B 建設発生土に関して(冨田、西原、田辺)
建設汚泥のような軟弱な発生土は、セメント系・石灰系材料を用いて改良することにより、盛土材や埋め戻し材等に有効利用されてきた.しかしこれらの改良土に対して、近年、環境問題がクローズアップされ、具体的には、セメント系地盤改良土に対して、六価クロムの溶出や強アルカリ性問題が取り上げられるようになった。これらの諸問題に対処するために、中性固化処理技術の研究開発が注目されている中で、本研究では焼石膏を主材とする中性固化材と、微粉末スラグを用いた地盤改良土の工学的な特性についての検討を行ない、成果をあげた。