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人間科学研究科 
Graduate School of Human Sciences

医療福祉・心理セミナー

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今年度より「医療福祉・心理セミナー」を5回に渡り実施しました。

2015年度実施報告

第1回 脳画像の読み方 (講師:井野口病院脳外科 部長 丸石正治 先生)

本専攻では,今年度初の取り組みとして,「医療福祉・心理セミナー」を5回にわたり開催いたします。
医療や福祉の現場で心理学のニーズが高まっているようですが,具体的にどのような知識やスキルが求められているのか,教科書や講義で学ぶだけではわかりません。そこで,現場で心理学ないし心理学の関連領域のお仕事をなさっているエキスパートをお迎えして,大学院生や学部生に,「知っておくべき(学んでおくべき心理学とその周辺)」についてお話していただくことになりました。
 去る10月7日に第1回を開催しました。井野口病院脳外科部長の丸石正治先生をお迎えし,「脳画像の読み方」と題し,脳損傷と認知機能や言語・行動の障害との関係について具体的なお話をしていただきました。①障害された場所がわかる,②撮影法の特徴を理解している,③病名がわかる,④障害された場所から症状が推察できる,ということがポイントのようです。
 そしてそれができるようになるには,何百枚と何千枚も観察したり,トレースしたりという経験が必要だとのことです。もちろんそういた経験は医療機関に就職してからでないとできませんが,その前に,たくさんの知識が必要だということがわかりました。
 また,おまけの話として,高次脳機能障害の「高次」の意味,障害の受容や支援,社会的行動の文化差についてもふれていただき,逆に,心理学が医療に果たす役割もあることを実感しました。
 国家資格「公認心理師」がスタートするに当たり,大学院の教育内容はより現場を視野に入れる必要が出てくるでしょう。その意味で,このセミナーはタイムリーな企画だったと考えています。
                                      (研究科長 青野篤子)



第2回 病院での心理の仕事 (講師:鳥取生協病院心療科 心理士 谷口敏淳 先生)


鳥取生協病院心療科で心理士として仕事をしておられる谷口敏淳先生をお招きし,「病院での心理の仕事」というテーマで第2回目を開催しました。
 谷口先生は,病院内での認知行動療法を中心とした心理面接,病院スタッフのメンタルヘルスに関する相談,また病院に実習にくる学生に対する指導,さらには地域社会における健康増進や病気予防のための活動など,幅広く「心理の仕事」をなさっています。お話を伺って思ったのは,それらが実に有機的な結びつきをもっているということです。ただ一つのことを専門に行うのも仕事のやり方としてはあるかもわかりませんが,患者さんの治療をするためには,患者さんに関わる病院スタッフが皆元気に仕事をする必要がありますし,患者さんの社会復帰意を進めるためには受け皿となる地域への介入も当然必要になってくるでしょう。谷口先生の肩書は,それゆえ,臨床心理士,精神保健福祉士,専門行動療法士と多彩です。

 きょうのセミナーでは,主に,精神科医療における認知行動療法の基本と可能性をわかりやすく解説してくださいました。レスポンデント条件付けやオペラント条件付けをいかに臨床現場で使えるのか,多くの例を示しながら,また学生に問いかけながらの進め方だったので,応用行動分析や認知行動療法の授業をまだ受けていない1年生にもよく理解できたと思います。

 とくに印象に残ったのは,心理の仕事には研究スキルや「問題解決能力」が必要だということです。心理の仕事は定型業務ではないということでしょう。学生時代から考える習慣を身につけておく必要がありそうですね。そしてもう一つ,やはり治療=問題を直視することはキツイから,心理士と患者さんが気持ちを「共有」する経験が必要だと言われたことです。治療には目標が必要だが,焦らずじっくり取り組むこと。これは日々の私たちの教育にも通じるものですね。

                                      (研究科長 青野篤子)


第3回 DV被害者への支援 (講師:NPO法人ホッとるーむ 代表 谷元絢子 先生)

11月18日(水)に「DV被害当事者への支援」というテーマで,NPO法人「ホッとるーむふくやま」の代表を務めておられる谷元絢子さんをお迎えし,心理学を学び心理職をめざす大学院生にとって有益なお話をしていただきました。
 「ホッとるーむふくやま」は2001年に制定されたDV防止法を機に,谷元さんが中心となって設立されたもので,現在は会員60名,6名のスタッフ(それに協力スタッフとして7名が参加)で運営しておられます。
DVの現状や定義については本や資料で知ることができますが,支援の実際をふまえたお話しは重みのあるもので,私たちにDVについての重要な視点と,他の問題にもつながる心理的支援のヒントを提供してくれるものでした。
 まず,DVとは単なる暴力ではなく『力による支配』だということ,そして,親密な関係において一方が他方をコントロールし従わせようとして用いる威圧的な行動パターンだということです。そして,DVの本質は,ジェンダー格差を背景に相手を思い通りに支配することです。講演の途中で視聴したDVDにとりあげられた事例のように,身体的暴力はなくても,男性という地位や経済力で相手を支配し,相手の人格や自尊心を傷つけることこそがDVなのだと言えます。
 DVは被害者本人を苦しめるだけでなく,子どもへの影響も多方面にわたるということも忘れてはいけません。暴力を見聞きすることによるストレスだけでなく,暴力が許されるという価値観を身につけ,暴力の連鎖が生まれる可能性があります。
 支援の際の課題として,二次被害が大きな問題になるとのことです。被害者が相談した人(機関)が,「あなたにも問題があるのでは?」と自分の思い込みに基づくことばを発してしまうことが多く見受けられるようです。カウンセラーはただでさえカウンセラーという優位な立場にあるわけで,被害者と対等な関係をめざすことが求められます。また,加害者の言い分を聞く必要はなく,あくまでも被害者の立場に立つことが重要だそうです。さらに,助けてあげるという姿勢ではなく,本人が力を取り戻すのを援助するのが本当の支援につながるということです。カウンセリングだけでなく,被害者が状況を脱し,決定することに役立つ情報提供を積極的に行う必要もあるとのことです。
 「被害者・当事者の存在,再出発をめざす闘いが社会を変える」というしめくくりのことばは,やはり支援活動を長く続けてこられた谷元さんだからこそ出てきたものだと思いました。         
                                      (研究科長 青野篤子)


第4回 発達障害の現状 (講師:発達ルームあるふぁ202 代表 清水芳和 先生)

第4回は,現在注目されている発達障害の現状と支援方法について,発達ルームあるふぁ202代表を務めておられる清水芳和先生よりお話しいただきました。今回は,川人が報告させていただきます。
 先生のお話の中心は,通級による支援と学習障害児へのアセスメントと支援方法でした。通級とは,普通学級に籍を置きながら,学習支援などに通える形態です。
 まずは学習障害の定義や現状についてご説明いただきました。先行研究より,文字の読みにくさを持った子どもたちは,英語に比べて日本語は少なく,言語的特徴によって支援方法が異なることを説明いただきました。特に,日本語では,音韻を認識できる能力,さらに視覚的に文字を認識する能力が重要とのことです。
 さらに,児童生徒の文字学習レベルの確認方法として,最近ではIT機器を取り入れて,数秒単位で発声等の反応が計測できるソフトを利用されているようです。また,教科書を読み上げてくれるソフトやアプリが開発されており,努力では補いきれない能力をサポートしてくれるIT機器が誕生しています。時代は変わりましたね~!!
 先生のお話では,小学校3,4年生の学力が身につているかどうかが,小学校高学年や中学校での児童生徒の情動の安定性や問題行動に影響を与えるようです。非行や情緒不安定などの二次的問題を防ぐために,早期発見と早期介入が非常に重要だと感じました。
 教員の私自身,教育や臨床活動の中で活かせる重要な知識をたくさん教えていただきました。聴講していた学生にとっても,大変明快かつ刺激的な内容であったと思います。
                                          (川人潤子) 


第5回 認知症と介護の現場 (講師:社会福祉法人さんよう 理事長 辰川和美 先生)

5回シリーズで開催した2015年度医療福祉・心理セミナーもいよいよ最終回となりました。去る12月6日,社会福祉法人さんよう・理事長の辰川和美さんをお迎えしました。特別養護老人ホームの運営に携わっておられるほか,心理士として認知症の患者さんのケアなどにもかかわっておられます。
 超高齢社会に突入し,認知症対策が喫緊の課題となる中,辰川さんは,いち早く病院内に「物忘れ外来」の診療科を設け,地域社会での啓発活動に取り組んでこられました。また,医療における心理学の必要性も以前から訴えてこられ,福山大学心理学科も,病院の職員の方を対象に「心理学講座」を開かせていただいたことがあります。
 さて,今回のセミナーでは,心理学を学ぶ大学院生が知っておくべき認知症の基本事項,介護の現場についてお話いただきました。
 認知症についてはICDやDSMの詳しい定義がありますが,より一般的には「脳や身体の疾患が原因で物忘れを中心に,理解力や判断力などに障害が起こり,普通の社会生活が送れなくなった状態」とされ,いわゆる「認知」の障害にとどまらず「生活」上の障害を伴っているという認識が必要とのことです。
 認知症は全国で462万人と推定されますが,だれしも85歳くらいまで生きれば認知症になっても当たり前だということで,他人事ではありません。だれもが受容しなければいけない現実となっているのです。したがって,介護保険制度についても勉強しておく必要があります。また,日ごろの運動や食生活などによって認知症を予防したり進行を遅らせることもできるそうです。
 これから心理士をめざす大学院生は,どんな現場に出ても高齢者に接する機会がふえるでしょうから,認知症についての正しい理解と知識が必要です。確定診断における心理検査,パーソンセンタードケアの視点,スタッフの支援,家族支援といった分野で心理学が役に立つとのことでした。
                                      (研究科長 青野篤子)



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