お礼のごあいさつ
                   
 本日は、私の京都大学退官記念のために、ご多用のところ多くの皆様にお越しいただき、厚くお礼申し上げます。また、心暖まるお言葉と、過分の記念品を頂戴し、感激の極みです。
 「光陰矢の如し」と言いますが、昭和三十三年に京都に来まして以後、今日まで四十五年近くがあっという間に過ぎ去った気がいたします。
 幸い、師と先輩に教えられ、優秀な同僚、学生、そして事務の方々に助けられて、余り出来の良い方ではない私も、なんとかやってくることができました。熱い感謝の気持ちでいっぱいです。
 京都大学に入ってみますと、周りはすべて私より頭のいい人ばかりで、いつもコンプレックスを抱き続けていましたが、なんとか皆さんに互して人並みにやって行くには、時間を多くかけて、努力をしなければと、生来理解力とくに記憶力に欠ける私は思ったものでした。それから得た教訓は、「九割、場合によっては九割九分は、努力で出来る」(残念ですが百%は出来ません)ということです。車で朝早く出て(途中、三十分弓をしましたが)研究室に七時前に来て、毎日家内が作ってくれる弁当を五分で食って、時間をかせぐことになりました。
 とくに、最後の一、二年は研究室の四回生や大学院の諸君と一緒に、実験をしたり、計算をしたりして、それまで同僚にまかせっきりだったことを、一兵卒として自分自身でできたことは何よりのよろこびで、結局自分は、こういう生活が一番性に合うのだとの思いを持っています。したがって、この京都大学を立去るのが断腸の思いで、定めとは言え、退官することは無念としか言いようもありません。
幸い、縁あって四月からは、福山大学でお世話になることになりました。退官というより、転勤するという気持ちです。福山大学では、教鞭をとるとともに、今の仕事を続けるべく努力する所存です。
 年を重ねますと、これまで書いた論文が数だけは増えてしまって、歳をとると、その在処を探すのにいたずらに時間ばかりがかかります。自分のためと、論文などをCDに入れました。実行委員会のお勧めで、押しつけになりますが、雑文などとともにお手元に置いていただき、パソコンでご高覧いただければ幸いです。ファイルが重く、すべてを収録することは出来ませんでした。これまで、一緒に研究をしてくださった研究室関係者には、お詫びいたします。
どうか、今後も今までと同様、おつき合いとご鞭達をお願い申し上げます。
最後に、皆様のご健勝と益々のご発展を祈念しつつ、お礼のことばといたします。
                          感謝をこめて

平成十五年三月一日
                           井上達雄

皆 様

   

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