京大生協らいふすてーじ 2003.3
           45年前の学生生活と生協 
 
                      エネルギー科学研究科 井上達雄

 私が京大に入学したのは、昭和34年(1959)で、"もはや戦後ではない"とか"所得倍増"と言われたころであるものの、今の学生生活とは大違いの貧しいものであった。
私の次の学年が最後になったが、当時の1回生は宇治分校(今の宇治キャンパス)で授業を受けた。「ここにも萌ゆる六百」の学生しかいなかった三高の施設を引き継いだ吉田分校(今の総合人間学部のあるキャンパス)では、1000人の入学者の倍(1,2回生を併せて。それでも今の半分)をとても収容出来ず、第2キャンパスとしての宇治分校が設置されていたのである。
隣の自衛隊とともに、そこは陸軍の火薬庫の跡で、爆発したときに横に被害が及ばないように、分厚い壁に薄いトタン張りの天井。夏は藪蚊に悩まされ、冬は石炭ストーブで寒さを凌いだものであった。したがって、2回生になって吉田分校にきたときは、これでやっと京大に入ったという気持ちさえ持ったものである。
「もはや戦後ではない」との池田首相(「貧乏人は麦を食え問題」で物議をかもした京大OB)のかけ声とは裏腹に、米は相変わらず配給制であった。すなわち、我々みたいに下宿をする者は、米屋で米穀通帳によって買う代わりに、これを外食券に替えてもらっておいて、その券を出すと、ヤミ米より50銭安い12円50銭でどんぶり1杯の飯が食えた。(長いこと、この飯代は市電の運賃と一緒だった記憶がある)。朝定食は23円、昼が32円、夕食が43円で、一日100円そこそこが大方の飯代であった。金がないときには、3円のみそ汁と食い放題のタクアンで空腹を満たしたものである。生協の総代会で、時計台の地下にあったちょっと高級な中央食堂に50円のランチがあって、「生協がそんなブルジョア的昼食を出すとはけしからん」と総代会で議論されたことさえあった。私は、今でもよく言うのだが、戦後から今まで値段の変わらないものが3つある・・・。1つは卵である。どんぶり飯に生卵は贅沢品であった。(因みに、2つ目は鉄鋼の値段、そして大学の研究費である・・・・。)
下宿代が一畳あたり500円、つまり6畳間で月3000円、四畳半で2500円程度(勿論バストイレつきの今の学生マンションとは大違い、ふすまを開けると隣に別の下宿人がいるという具合で、ほとんどは火鉢で暖をとり、洗濯板を使って冷たい水で下着を洗っていた)だから、あれこれで、1万円で1月が暮らせたものである。ただし、2万円足らずの学部出の初任給を10倍すれば、今とエンゲル係数、住居費などの割合は同じである。しかし、食事の内容にしろ、居住環境にしろ、内容は随分豊かになっているのは、今昔の感がある。
 服装は、ほとんどが学生服であった。私が初めて親父に背広をつくってもらったのは、卒業の直前で、4万円(何と普通の初任給の倍以上)だったことで、親父に感謝したことが記憶に新しい。普通の衣類や靴は、寺町通りへ行って、あっちの店では幾らだった、負けろ負けないと、一緒について来てもらった友達と2人がかりで交渉したものである。そして、安く買うのに成功すると、55円の映画をおごったことも多かった。そして、スター食堂で、100円もする夕飯を食うのが最高の贅沢であった。また、歌声喫茶「炎、で、50円のコーヒーを飲みながら、ロシア民謡などをよく歌ったものである。
 そのころ起こったのが、警職法、60年安保問題である。連日クラス討議が繰返され、円山音楽堂までのデモに行かない者の方が変り者として村八分にされるくらいで、あの全学連全盛時代である。全国で500万人のデモが起こり、国会で樺美智子さんが亡くなったのもそのときである。機動隊にヘルメットや投石防護盾が導入されたのは、その絶頂期以後で、はじめのうちは河原町、四条通りをジグザグデモをしても、高々靴で蹴られるくらいだった。そのころから、学生運動も、党派制が鮮明になり、やがて10年後の70年安保そして大学紛争の時代へと変わっていくことになる。
京大生協に一言。ものは良いと言うが、量販店以下にせよというには無理としても、市中に比べて店頭の値段は、決して安いとは言えない。一方、最近の京大生協は少し商業主義的になってないだろうか。京大グッズは時代の流れとしても、購買部や食堂で、買い物をすると"ありがとうございます"といわれるのは、ちょっと気になる。(といってブスッとされるのも困るけれど、、、)。本来は出資者のための生協で、店の人は、組合員が雇っている立場であろう。かっては(今もか?)大学生協の最大を誇る京大生協も、たまには生協運動の原点に立ち返って振返ってみることも必要ではないだろうか。収益がある党派に流れているとかなどという問題でもめたことを思い出して気になるこのごろではある。