平成19年11月に本学専任教員が担当する後期の授業について「学生による授業評価」を行った。この授業評価アンケートは、本学における教育改善の一環として平成17年度から毎年実施しているものである。
授業評価アンケートの対象科目は、前回(平成18年度後期)と同様、講義、実験、実習、演習とし、科目選定にあたっては学部・学科の教育理念・目標等を加味し選定するよう、学部長及び学科主任に依頼した。この結果、講義262科目、実験・実習・演習8科目の270科目(受講登録者13,952名)について実施することとなり、11,535名(回収率82.68%)からの回答を得た。
質問事項は、前回同様マークシート上に講義については18項目と自由記載欄を、実験、実習、演習については18項目と各担当教員が設定する質問事項及び自由記載を設け、その質問内容は前年度と比較するためにも、同じものとした。
可能な項目については、5段階評価に換算し、全学、学部毎、学科毎に各項目についての平均値を算出し、個人の結果については、授業の改善に役立てるため学部長を通じ該当教員に伝えた。
ここでは、講義科目に関して学生にとっての授業の満足度と授業評価アンケートのいくつかの質問項目との関連について紹介する。
- 授業に対する学生の満足度
回答結果を「満足した=5.0」,「ほぼ満足した=3.67」、「やや不満であった=2.33」、「不満であった=1.0」に換算し、学生の満足度を5段階評価に換算した。その結果、全講義科目の平均値は、3.91で前回の3.97に比すと0.06下回ったもののほぼ前回なみとみることができ、ほぼ満足している状態にあると思われる。しかし、多様な学生が増加する中でその学生に対応できないためか、平均値をかなり下回る教科がみられたので、これらの教科については授業方法等について早急な改善が望まれる (図1) 。
ちなみに学部別の満足度の平均値は、次のとおりである。
経済学部 3.85
人間文化学部 3.81
工学部 3.65
生命工学部 3.93
薬学部 4.03
留学生センター 4.83
図1 満足度の分布 - 各質問に対する回答間に見られる相関関係
学生にとって満足できる授業とはどのような授業であるかを知るため、関連する質問項目の間の相関を調べた。
各質問項目に対する回答の相関係数から、満足度との関連から見ると授業のわかりやすさ、関心度、やる気、教員の話し方、板書の仕方、教員の熱意などに、授業のわかりやすさの関連から見ると関心度、やる気、教員の話し方板書の仕方などに強い関連を示している。
各回答間の相関係数(R)は、次の表1のとおりであった。
わかりやすさ 関心度 やる気 教員の話し方 板書の仕 方 映像授業 教員の熱意 満足度 分かり易さ ― 0.7402 0.6841 0.7095 0.6477 0.3383 0.4917 0.8039 関心度 ― ― 0.876 0.5911 0.4876 0.3739 0.5604 0.7912 やる気 ― ― ― 0.5249 0.445 0.3578 0.5312 0.7138 教員の話し方 ― ― ― ― 0.6958 0.2855 0.5513 0.6966 板書の仕方 ― ― ― ― ― 0.2006 0.4435 0.665 映像授業 ― ― ― ― ― ― 0.2663 0.3726 教員の熱意 ― ― ― ― ― ― ― 0.6275
- 授業の分かり易さについて
授業のわかりやすさの回答結果を「わかりやすかった=5.0」,「ほぼわかりやすかった=3.67」、「ややわかりにくかった=2.33」、「わかりにくかった=1.0」に換算し、授業のわかりやすさを5段階評価に換算した。その結果、全講義科目の平均値は、3.52であった。
ちなみに学部別の授業のわかりやすさの平均値は、次のとおりである。
経済学部 3.44
人間文化学部 3.42
工学部 3.13
生命工学部 3.53
薬学部 3.70
留学生センター 4.5
「回答間の相関係数」表1からも見受けられるとおり、「授業のわかりやすさ」は、あらゆる項目と高い相関を示している。特に、「関心度」は0.7402、「教員の話し方」は0.7095、「板書の仕方」は0.6477と相関は高い値を示しており、自由記載にも教員の話し方、板書方法については多数の記載があった。「教員の話し方」、「板書の仕方」については、後述する。
同じ講義科目でも、「わかりやすかった」あるいは「ほぼわかりやすかった」の回答と「ややわかりにくかった」あるいは「わかりにくかった」の回答とに二極化される講義科目も相当数あり、多様化する学生への対応の立ち遅れが気になるところでもある。
こうした中で、自由記載に、講義の際配付された資料が授業を理解する上で、また後日大いに参考となったとの意見が多くみられたことは、わかりやすい授業とするためにも教科書の選定とともに工夫を凝らした参考資料の積極的活用も考慮すべきであろう。
なお、262科目について授業のわかりやすさの回答を5.0〜4.51、4.5〜4.01、4.0〜3.51、・・・1.50〜1の8段階に分け、それぞれ該当する科目数を棒グラフに示す(図2)。
また、「授業のわかりやすさ」と「満足度」、「授業への関心度」、「教員の熱意」との関係は、図3から図5のとおりである。
図2 わかりやすさ
図3 わかりやすさと満足度の関係
図4 わかりやすさと授業への関心度の関係
図5 わかりやすさと教員の熱意との関係
- 板書について
板書が、授業を理解する上で、学生にとってもっとも関心のあることは「板書の仕方」と「授業の分かりやすさ」、「満足度」との相関に高い数値を示していることからも明らかである。「板書の仕方」と「授業のわかりやすさ」の関係及び「板書の仕方」と「満足度」の関係についての分布図は、図6,図7のとおりである。 なお、板書に関する自由記載欄には、主として次のことが記載されている。
文字の大きさと丁寧な字
板書の量が多すぎる
^ スピーチのみで板書が少ない
板書の位置(黒板の角、下の方に書くと見えない)
整理された板書を
板書と話すときのタイミング
板書を消すのが早い
キーワードのみの板書はわかりにくい
図6 板書の仕方とわかりやすさの関係
図7 板書の仕方と満足度の関係
- 教員の話し方について
「教員の話し方」と「授業の分かり易さ」の相関係数は0.7095、また「教員の話し方」と「満足度」の相関係数は0.6966で、教員の話し方で講義内容に対する満足度に大きな差が生じる。「教員の話し方」と「授業の分かり易さ」の関係及び「教員の話し方」と「満足度」の関係についての分布図は、図8,図9のとおりである。
なお、教員の話し方に関し自由記載欄には、次のことが記載されている。
声がきこえない(マイクの使用を)
説明の仕方が難しい
学生の目線にたった講義を
話の早さに関するもの(口調が早い)
余談が多い
講義中の罵詈雑言はやめてほしい
図8 教員の話し方とわかりやすさの関係
図9 教員の話し方と満足度の関係
- 自由記載欄に記載された学生の意見
設定された質問事項以外に、多くの学生が自由記載欄によかったこと、改善してほしいこと等を述べている。
誹謗する記載が数点見受けられたものの、ほとんどの記載事項は学生が、日頃感じていたことの表明で、まじめな態度で記載されたものである。記載内容は、板書に関するもの、配付資料に関するもの、講義の内容に関するものが大半であり、今後の授業改善にあたって大いに参考とすべきものである。
記載された主なものは、以下のようなものである。
- 全員が理解できるよう授業を進められた。毎時、目標が決められていたので、やる気が出た
- 一人一人丁寧に見ていただいた
- 質問を真剣に聞いてもらえてよかった
- 先生のおかげで英語が大嫌いから少しすきになった
- 授業の広がり、深さ、参考文献の提示など(適切であった)
- パワーポイントの使用方法
- 小テストをし、すぐ分かり易い解説があるのがよかった
- 毎回の小テストは実力がついてよかった
- まとめ(テスト対策プリント)のプリントはよかった
- 授業内容のプリントがほしい
- 板書がまとまっており分かり易かった
- 授業方法について(学生の発表方式でなく、教員による講義に)
- 私語への注意喚起を
- 教室が狭い(教科書、資料、ノート等を置く場所に窮する)
- 映像授業時の教室の照明(全部消灯しないで、筆記できる程度の照明にしてほしい)
- 難しい構造式・化学式だけでは授業が理解できないので、分かり易い説明を
- 授業の目的が分からず、何をどのように勉強すべきか分からなかった
- 教員のやる気について
- 総評
授業の善し悪しは何によって決定されるのか,非常に難しい問題である。また,学生の授業評価にどの程度信頼をおくべきかについても議論のあるところである。しかし,学生のための授業であることを考えれば,学生の意見に耳を傾けるのは当然のことである。今回の授業評価の結果を総合すると,授業への関心と授業のわかりやすさが学生の授業に対する満足度に大きく関わっていること,教員の話し方や板書の仕方が授業のわかりやすさに関係していることが示されている。これらは授業の基本をなすことがらであるので,今一度基本に立ち戻る必要があるのではなかろうか。教員の熱意だけでは良い授業にはならず,わかりやすさを企図して行っているはずの映像授業がわかりやすさや満足度にさほど関係していないことにも留意すべきであろう。学生の多様化が進む中で,すべての学生にわかりやすく授業を行うのは至難の業ではあるが,専門知識をわかりやすく伝えることがますます求められるようになるだろう。平成17年度から実施している授業評価がより効果的に実施されるべく,評価方法や活用方法について,自己評価委員会を中心に議論を深めていきたい。