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生物工学科 
Department of Biotechnology

福山市が指定する里山里地の視察

平成28年1月28日木曜日
福山市では、里山里地の再生・保全活動支援事業として、5つの地域を「里山里地地域」と指定しています。福山市経済環境局 農林水産課 里山里地担当の村上課長にご案内いただき、これら5つの地域で研究のタネを探してきました。佐藤が報告します。

まずは、福山市北東部にある山野町山野を訪問しました。地域一帯にこれぞ里山という景観が広がっていました。昔は近くの森を利用しており、炭焼きが盛んであったそうですが、今は利用しないことで雑木が増え、イノシシやサルなどの野生動物が増えたとのことです。里山里地指定後、耕作放棄地に生えた雑木や雑草を除去し、そば、小麦、柚子などを育てています。



柚子畑では、ちょうど柚子を採っているところでした。柚子を取る時期としては遅いのですが、商品が少なくなってきて追加で採っているのだとか。「手間はかかるけどおいしいジャムができる」とのこと。この1週間の寒さで山の餌が少なくなったのか、サルの集団が最近よく出没し、この柚子を食べるのだと地元の方。


匂いを嗅ぐととても良いにおいがします。柚子には実がなる年とならない年があるそうです(裏表がある)。


山の上のお寺の裏にあるお茶畑です。寒暖の差が大きい山野町では良いお茶の葉ができるそうです。山野町の野生動物について、お茶畑を管理されている方と話すと、「イノシシやサルは周囲の山全体に生息しており、ここ30年で増えてきているけれども、それは、おそらく人が森を利用しなくなり(山の手入れがなくなり)、野生動物が次第に民家に近いところまで来てしまったのだろう」とのことです。「雨の前日にはサルが出る」と言われているらしく、実際に、この日は雨、前日はサルの集団が出没したとか。サルにとって山の何が足りず里に下りてくるのでしょうね?


里山里地で作った農産物や、柚子やお茶などの加工品を売るお店「キラリやまの」です。加工品としては、ゆずのマーマレード、ゆず茶、そばを使った飴などを販売しています。地元の農作物を加工し、販売することで六次産業化を目指しています。


かつて栄えた炭焼きのための窯です。今はお祭りなどのイベントで使われているそうです。現代社会は、石油などの化石燃料が主流ですが、日本全体で見ると、地元の薪を利用することでエネルギーを地域循環させる試みもどんどんなされています。私たち日本人は7割が森林の国土に生活しながら、他国の資源を利用しすぎなのです。そしていずれ化石燃料は枯渇します。


炭焼きの窯

続いて、山手町及び津之郷町津之郷に行きました。広島県の100年の森構想の中で、この地域一帯を市民の憩いの場とすることを目的として、耕作放棄地における雑草の刈り取り、雑木・竹林の伐採等を行い、維持管理をしています。周囲には竹林が多くみられます。

この里山里地では、特に伐採した竹から作る竹パウダーの有効活用をしたいとのことです。現在は、土壌改良材に使っているそうです。また、竹炭を作っており、その過程で生じる竹酢液(酢酸を含む)は、殺菌作用を持つことから、これも何かに応用できないか模索しています。その他の木については、例えば、キノコのほだ木として利用されています。管理しなければ伸び放題で、管理しなければならないのです。そして管理して出てきた「いらないもの」をどう活用するかが考えどころです。


切った竹

竹炭を作る焼却炉で、後ろから竹酢液が出る

キノコの栽培

カブトムシの飼育

続いてこちらは、赤坂町赤坂の里山里地です。こちらも耕作放棄地だった場所です。周辺ではもともと畑であったらしい場所が竹林に変化しています。段々畑の名残があることから耕作放棄地であることがわかります。また、数十年の間に一気に竹林が形成されたこともわかります。


今は、一部、雑草雑木を刈り、小規模な畑を作り、ブロッコリーやキャベツ、他にもカブ、レタスなど色々な野菜を育てています。


イノシシが頻繁に出没するため、捕獲罠が2機設置されていました。福山市では、毎年1000頭のイノシシが捕獲されるとのことです。ちなみに今回、訪問したすべての里山でイノシシは出ます。


竹林は伐採して、その一部はカキいかだの材料となっているそうです。カキの浄水能力は非常に高いことが知られており、里山の資源が里海の環境浄化にも活かされているのは素晴らしいと思いました。


さて、4つ目の場所は、熊野町です。一乗山の黒木城跡から見下ろすと、美しい里山景観が広がっていました。ホタルがいるということで季節になると観光客が集まるようです。野生動物については、イノシシが出るのはもちろんのこと、最近では、特定外来種であるアライグマの出没が報告されているようで、対策が必要なところです。この地域でも耕作放棄地を再び利用するために管理が行われていますが、里山里地として最近指定されたため、具体的な活動はこれからのようです。鞆の浦から山に少し入ったところにありますが、福山大学から近いのでフィールドとしては良い場所にあると思いました。


最後に訪れたのは、内海町(田島)です。ここでも耕作放棄地を再び利用するために管理が行われています。主に、観光資源として、やぶ椿と水仙が植えられており、6頭のヤギが飼育されていました。ヤギについては、今のところ除草と観光目的で飼育しているとのことです(とにかくすごい勢いで葉を食べていました)。養蜂も最近始まったようです。海岸がすぐそばであるので、晴れていると瀬戸内海の綺麗な景観を眺めることができます(残念ながらこの日は曇りのち雨)。


水仙畑からの眺め(天気が良いと癒しになるかも)

水仙

水仙

ヤギ 樹皮まで食べる

今回、福山市の5つの里山里地を訪問し、生物多様性に関する研究の可能性を見出すことができました。野生動物との共生を探るため、そして、長期的な生態系機能の解明のため、福山市の里山里地には注目していきたいと思います。また、「いらないものを有効利用したい」という問題は、生物工学の力を発揮することができる点であると思います。こうした課題を解決することで是非、地域貢献につながれば良いなと思います。

福山市ではこれら里山里地での作業を協力してくれる隊員を募集しています。興味のある方は、こちらまで→https://www.city.fukuyama.hiroshima.jp/soshiki/norinsuisan/56307.html
特に学生さん、どうぞ!小学生の遊び場としても非常に良いと思います。小学生を子に持つお父さんも日曜日に是非!

最後に、現在、グリーンサイエンス研究センターでは、里山に関する研究プロジェクトを進めています。面白いですよ。大学院生募集中!

佐藤淳


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