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生物工学科 
Department of Biotechnology

アクティブラーニング!生物環境実験(生物編)

3年次生を対象に生物環境実験(生物編)を行いました。

この実習では、福山大学の建物による森林の分断化がアカネズミの遺伝的多様性に影響するかどうかを調査します(以前、学長室ブログでも記事を書きました。)。誰も答えを知りません。学生が主体的に何を自然から教えてもらいたいかということを考え、積極的に学ぶ必要があります。つまり、この実習は、アクティブラーニングの手法を取り入れた実習です。まずは、昨年までの結果と福山大学の航空写真を基に、どこからどれだけのネズミをサンプリングすれば、何を知ることが出来るのかを10分間自分で考えます(下図)。



その後、SGD (Small Group Discussion)形式で、各班ごとに15分間議論し、仮説を立ててもらいました(下図)。「俺は・・・を知りたいなぁ」などという言葉が出てきました。アクティブラーニング効果ですね!



そして、各班の仮説の説明と、その仮説を検証するためには何処にネズミのトラップをかければ良いのかを班ごとに発表してもらいました(下図)。論理的にできていたと思いますよ。



各々の班の仮説を検証すべく、学内に80個ほどのトラップを仕掛けましたところ、18個体のアカネズミの捕獲に成功しました。過去の経験からすると素晴らしい捕獲効率です。捕獲地点を新規開拓した班もあり、なかなかやる気があります。アクティブラーニング形式の一つの良い面が出たと思います。フィールドではアオダイショウがトラップに挟まっているいう事態も起きましたが、怪我もなく無事にフィールド調査を終えました。アオダイショウはトラップの扉をゆっくり開いてちゃんと逃がしてあげましたよ。



こちらがアカネズミです(注:今年は写真を撮るのを忘れてしまいましたので、以前捕獲した個体を。。。)。



実験室に戻り、DNAの抽出を開始しました。ここから作業はだんだん細かくなっていきます(生態系から個体へ、個体から分子へ)。下の写真は肝臓の摘出作業の様子(左)と、DNA抽出後、糸状のDNAが見えた喜びの瞬間(右)です。



次の週に、PCRでミトコンドリアDNAの一部(Dloop領域)を増幅し、電気泳動で目的領域の増幅の有無を確認しました。その後、エタノール沈殿という方法でDNAの精製を行いました。見えない沈殿物を吸わないように集中して上清を吸うという作業でした。無言です。見えない敵との戦いです。



そんな緊張から解放された瞬間です。たぶん。ま、たまにはいいでしょ。実習は楽しくなきゃ!人間コチコチだけじゃいけません。ふらふらも時には大切ですから。意味が違うか。。。



実験の最後に、自分の"育てた"大切なサンプルをシークエンサーにかけて、DNA塩基配列を決定しました。1マイクロリットル150円の試薬を2マイクロリットルずつ使ってもらいました。この2マイクロリットルで缶ジュース2本買えると思うと、作業は丁寧で慎重になりますよね。その効果を狙いお金の話をするわけで。。。



さらに翌週、ICT教室でDNA塩基配列の解析をしました。福山大学ではこれまでに13タイプのミトコンドリアDNAが検出されています。今回解析した18個体がどのタイプになるのかを、系統解析ソフトウェアMEGAを使って調べました。その後、この実習の最初に行ったように各班で建てた仮説が実証されたのか、それとも否定されたのか、そして新しい知見は得られたかどうかをSGD形式で議論し、最後に再び各班の結論を他班の前で発表してもらいました。



このようなアクティブラーニング形式にはまだまだ慣れていない感がありましたが、しかし、質問も出て、教員を挟まない議論も見られました。積極的に明らかにしようという姿勢があったからこそ、議論が出来たのだと思います。積極的に学ぶ姿勢。これが学習の全てです。



今回得られた結果は以下の通りです。

1.過去の解析では出てこなかったタイプが見つかりました。このことから、過去の研究で解析されていた20個体程度では、1集団の遺伝的多様性を正しく評価できないかもしれないということがわかります。

2.大学内部に隔離された孤立林が二つあります(中央部1と2)。過去の研究では、中央部1ではタイプ1が半数以上を占め、中央部2ではタイプ2が4分の3以上を占めていました。つまり、隔離が遺伝的多様性の低下を引き起こしたことが示唆されていました。しかし、今回の実習の結果、中央部1ではタイプ1が見られず、中央部2からはタイプ2が見られず、過去には稀であったタイプが検出されるという結果となりました。遺伝的多様性の低下も検出されませんでした。これは過去のサンプリングが後の集団の遺伝的多様性に影響したことを示唆します。

1,2を考え合わせると、20個体のサンプリングであっても集団の遺伝的多様性に大きな影響を与えてしまう一方で、20個体では適切な遺伝的多様性の評価はできないというジレンマがあることが明らかとなりました。今後は、より非侵襲的な方法でより多くの個体数を解析する必要があるという結論に至りました。

既存の知識を学ぶことだけが学習ではありません。学習者の自らの経験が知識を生み出すという体験がとても大切なのだと思います。生物環境実験でのアクティブラーニングの進化は続く。。。



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