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建築学科
Department of Architecture

高校生デザインコンペ2017 『地域に根差したこれからの建築』 講評・入賞作品

最優秀



「Green Beside You ~都心から1時間で静寂と闇が手に入る~」
 中久喜美菜(東京都立田無工業高等学校)




「湧水の家」
 植松駿(静岡県立科学技術高等学校)


部門B:図面、CG等によるビジュアル表現


優 秀


「水車の家」
   相原哲生(静岡県立科学技術高等学校)


「水・風・光と生きる。~自然と人に優しい家~」
   福井海紗季(岡山市立岡山後楽館高等学校)


「にこにこ農園大改造計画 ~地域に根ざした市民農園~」
   大澤美花(東京工業大学附属科学技術高等学校)
    


佳 作


「繋がる風の家」 糠谷勇輔(静岡県立科学技術高等学校)

「地元を感じる家」 西村友貴(静岡県立科学技術高等学校)

「つながり、ひろがる。」 桑原あかり(熊本県立球磨工業高等学校)

「坂道の家」 武本真侑(広島県立福山誠之館高等学校)

「川の上に乗っかる喫茶店」 白樫大河(岡山市立岡山後楽館高等学校)

「いつも人と触れ合える家」 堀本美也子(岡山市立岡山後楽館高等学校)

「魔除けのある家」 外間久流海(沖縄県立浦添工業高等学校)



 部門Bでは34点の応募があり、その多くが住宅による提案でした。「地域に根差したこれからの建築」という課題タイトルから、風、太陽光、エコロジー、自然条件を利用した機械に頼らない持続可能な建築、近隣交流や地場産業等の地域とのかかわりを意図した建築、家族のつながりと環境条件を提案した建築、地域の風景や景観を考慮した建築等の様々な提案が寄せられました。

 最優秀作品は、「Green Beside You」と「湧水の家」が甲乙つけがたく高い評価を受け、この2作品が選定されました。
 「Green Beside You」は、自然環境に恵まれた東京近郊の地域に敷地を選定し、「貸しキッチン」を組み込んだ近隣交流を意図した住宅の提案です。1階は中央部の貸しキッチンと囲炉裏のブロックを軸に、その両サイドに土間が設けられ、縦の5つのブロックで構成され、2階に家族の住居スペースが配置されています。この作品は、2つの土間空間に挟まれた貸しキッチンと囲炉裏が、単なるレンタルスペースではなく、共に食事を作りその食事を共にするという生活に根ざした地域の団欒の空間として計画され、明快な建物構成と丁寧に描かれたプレゼンテーションも評価され、最優秀案に選定されました。サブタイトル「都心から1時間で静寂さと闇が手に入る」の闇に該当する部分は、細長い土間空間や囲炉裏のある空間かと思われますが、もう少し図面に表現されればさらに魅力的な作品になったでしょう。
 もう一つの最優秀作品「湧水の家」は、昔からある湧水を利用した地域固有の自然条件を利用した持続可能なエコ住宅の提案です。南北の縦長の敷地に、東西2つの縦長のブロックをスリットで挟んで構成し、家族用の玄関と客用の玄関を分けて配置しています。湧水口が1階と2階に数箇所設けられ、夏と冬に水量を調節して利用され、通風についても夏と冬の地域特性としての風向きに対応して計画されています。この作品は、風と湧水という2つの地域固有の環境条件を計画に取り入れ、2つの建物間のスリットが風道として使われ、全体的にバランスの取れた建物構成と巧みな図面表現が評価され最優秀案に選定されました。ただし、もう少し湧水口の具体的な形式及び建物間の狭いスリットの通風以外の利用等が提案されればさらに魅力的な作品になったでしょう。

 次に、優秀作品は、「水車の家」、「水・風・光と生きる」、「にこにこ農園大改造計画」の3作品が選定された。
 「水車の家」は、地域資源としての豊富な水資源である水車と水路に着目して特化された作品であり、リビングルームの下部を流れる水路と水車、さらに、その水路に面して設けられた3つのレベルのテラスとそこからの景色、水車に地場産のくすのきの使用等、当コンペの課題趣旨に対する的確な内容が評価された。
 「水・風・光と生きる」は、以前利用されていたが、現在ほとんど利用されていない祇園用水を計画に取り入れた住宅の提案であり、地域資源の活用と、水、換気としての風、光としての窓という環境条件を取り入れ快適な生活環境を提案していることが評価されました。
 「にこにこ農園大改造計画」は、数少ない住宅以外の作品であり、小学校跡地の斜面状の敷地に市民農園を計画し、農園とともに住民が調理するためのキッチンスペースのある休憩所、直売所等が設けられ、様々な世代間の住民同士の交流を目的とした点が評価されました。(以上、審査委員O)


部門A: 文章とスケッチ・写真等を主体とした表現


優 秀


「藤井君への手紙」
   福井杜倭(三重県立伊勢工業高等学校)


「BUSON珈琲」
   三木壽将(大阪産業大学附属高等学校)


佳 作


「Nahari Music♪ ~私が住んでいる奈半利町に音楽を作る~」 福永匠弥(高知県立安芸桜ケ丘高等学校)



 部門Aでは、15点の応募があり、「最優秀」は選定されませんでしたが、「優秀」に2作品、「佳作」で1作品が選定されました。

 「優秀」に選定された『藤井君への手紙』で特徴的なのは2つあります。まず1つは応募者自らのデザイン提案について日本が誇るパッシブデザインの先駆者「藤井厚二」へ向けてお手紙を書くといったユニークなスタイルです。もう1つは藤井厚二のデザインを研究した上で、そのデザインアプローチを、応募者が住まう地域と時代へ適用・応用するといったチャレンジです。応募者は、伊勢神宮のある三重県伊勢市に住んでおり、宮川、朝熊山、伊勢茶、伊勢海老、鮑といった地域のポテンシャルを活かす建築計画に着目しています。さらには、地熱利用、昼光利用、自然換気、騒音対策といった環境工学の要素を押さえた環境計画も提案しています。特に面白いと思ったのは、自動車駐車場における夏季の遮熱デザインです。一般に、夏季屋外に雨ざらしで置かれた自動車は、日射により暖められ、車内ではドライブ開始時の不快な熱環境を形成するとともに、車外に対しては放射熱源となり建築室内熱環境を不快なものにすることもあります。そのような現在のライフスタイルならではの問題を解消するデザインも特筆すべきことです。藤井厚二も思わず頷くデザインになったのではないでしょうか。
 
 もう1つの「優秀」作品は『BUSON珈琲』です。応募者が地域選定した大阪毛馬は、与謝蕪村(俳人・画家)の出身地です。その商店街で応募者の祖父母が呉服屋を営んでいることから、呉服を好きになってもらえるようなカフェのデザインを応募者は提案しています。印象的な点は3つありました。1つ目はかわいらしく温かみのあるスケッチ、2つ目は蕪村の俳句や好物をモチーフにしたデザイン、そして3つ目はディテールまでつくり込んだきめ細かいデザインです。蕪村の有名な俳句“菜の花や 月は東に 日は西に”に合わせて、月と日(太陽)をあしらった照明器具を各々つけた「月の間」と「日の間」を計画していますが、環境計画的には、本物の月と太陽(日)の運行リズムを活かした時間デザインという提案もあっても良かったのではないかという感想を個人的には持ちました。しかしながら、与謝蕪村は過去に見た光景を思い出しながらこの句を詠んだのではないかとも言われており、環境計画を超えたデザインが相応しいのかもしれません。いずれにしても、1Fカフェでコーヒーを飲んでくつろいでから、2Fにあがって呉服を鑑賞してみようかという気になるような現実味のあるデザインでした。

 「佳作」に選定された『Nahari Music』では、音楽を活かして多様な年齢層をミックスする地域活性化策や、音楽を活かした福祉の提案がなされています。応募者の提案の中にもあるように音楽は、鬱の予防になり、認知症の予防にもなることから、「音楽療法」が注目されてきています。「人間のホムンクルス」という図を見ると、人間にとっては指先、特に人差し指が大脳で大きな割合を占め感覚器として重要なことがわかります。それら指先を使う楽器演奏は、認知症対策に大きく貢献するだろうと推測され、応募者の提案に実に共感しました。奈半利町のホームページを拝見したところ「自然の音色が響く町」というコピーが出てきました。さざなみなどの自然の音を活かしたデザイン提案や、奈半利ならではの楽曲・楽器を活かしたデザイン提案などがあるとさらに魅力的な作品になったでしょう。音楽はエコやピースともつながってくるので、それとつなげた提案があっても面白いかもしれません。脳科学に照らしても、脳で“快”とジャッジされたときに最も“知”が働くようです。音楽を通して「楽しかった」「毎日利用したい」といった声が利用者から聞こえてくる施設を目指すという試みは時代の先を行く提案ではないでしょうか。(以上、審査委員I)


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